『ちいかわ』は『進撃の巨人』『まどマギ』よりも怖い? ダークファンタジーとしての強度

『ちいかわ』は『進撃の巨人』より怖い?

不死になるために食われた人魚とその復讐

 2023年の3月から、約8カ月間にわたって連載された『ちいかわ』の「島」編。壮大な物語は、1匹の島民が巨大な怪異「セイレーン」によって偶然にも瀕死になった友人を助けるためにセイレーンの仲間「人魚」を食べさせ、自分も食べたことがきっかけでした。

 「仲間を食われた」ためにその犯人を探し、見つかるまで島民を食べると話すセイレーン。残虐な行為の一方で、犯人でないとわかったちいかわたちを温めて回復させ、間違って襲ったことを謝罪する優しさも持ち合わせていました。

 しかしその後、ちいかわたちはセイレーンに怯える島民を助けることに。人魚を食べた島民(=犯人)は名乗り出ず、セイレーンは島民を襲い続けていました。この物語、最後は2匹の島民が仲間には何も明かさず、島から離れた無人島で暮らすシーンで終結。

 不死になるために人魚を食べた2匹が島に隠れて生活する展開は、巨人の力を巨人を食べて継承してきた種族の一部が島に籠って始まった『進撃の巨人』のようでした。

 加えて、ラストシーンのコマでは、2匹が暮らす島に迫るセイレーンと2体の人魚の姿が。『進撃の巨人』の壁の中のエルディア人に恨みを持った壁外の民たちの進行を思わせるような、セイレーンの復讐の再開を漂わせる画で終わっています。

 自分より優れた存在を食べて強くなる、『ちいかわ』の「人魚」と『進撃の巨人』の「巨人」に共通したシステム。自分が望んで食べられることも多かった『進撃の巨人』と比べると、「仲間を勝手に食べられた」物語である『ちいかわ』のほうが一層残酷なのかもしれません。

 アパレルブランドや食品メーカーとコラボするようなかわいらしい見た目でありながら、内面に深い闇をはらんだ『ちいかわ』のストーリー。

 島編が終わった現在は平和な日常の一コマが投稿されているものの、この先もちいかわたちに酷な試練が待ち構えていることは間違いないでしょう。

■放送情報
テレビアニメ『ちいかわ』
『めざましテレビ』(フジテレビ系)内にて、毎週火・金曜7:40頃〜放送
出演:青木遥、田中誠人、小澤亜李、井口裕香、杉田智和、東地宏樹、松岡禎丞、内田雄馬、淺井孝行ほか
原作:ナガノ『ちいかわ』
監督:松村樹里亜
シリーズディレクター:三原武憲
キャラクターデザイン:朝倉夕貴
色彩設計:石黒けい、伊藤裕香
撮影監督:金子直広(三晃プロダクション)
音響監督:土屋雅紀
音響効果:白石唯果
音楽:トクマルシューゴ
編集:茶谷真悟
アニメーション制作:動画工房
©ナガノ / ちいかわ製作委員会
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/anime_chiikawa
公式サイト:https://www.anime-chiikawa.jp/

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