『怪物』『ファイ』などのヨ・ジング、天才子役から実力派俳優へ 観る物を魅了する演技力

ヨ・ジング、天才子役から実力派俳優へ

 ヨ・ジングといえば、韓国では天才子役として知られ、大人になった現在も第一線で活躍を続けている若手実力派俳優だ。「ヨ・ジング」の名をキャストに見つけると、「この作品は面白いんだろうな」と、自然と期待と安心が持てる俳優でもある。

 1997年8月13日生まれのヨ・ジングは、現在26歳。まだ20代半ばであることに驚くほど、浮ついたところのない安定した演技力をどのジャンルのどんな作品でも発揮し、観る側をストーリーの世界へと惹き込んでいく。

 2005年、映画『サッドムービー』で子役デビューを果たしたヨ・ジング。150倍もの競争率だったという同作のオーディションを勝ち抜き、まだ小学生のうえに初の演技だとは思えないほど、表情豊かに『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』などのヨム・ジョンアの息子役をやってのけた。翌年、同作のプロモーション活動で初来日。大きな瞳を輝かせながら、共演者たちと和気あいあいとするなか、ヨ・ジングの愛らしさが光っていた。

『太陽を抱く月』(MBC公式サイトより)

 このデビュー作を皮切りに、子役として、数々のドラマや映画に出演。なかでも、ヨ・ジングが主人公の少年時代を演じた作品で、ともに時代劇ドラマとなる2008年のイ・ジュンギ主演の『一枝梅(イルジメ)』でSBSの演技大賞男性子役賞を、2012年のキム・スヒョン主演の『太陽を抱く月』でMBCの演技大賞男性子役演技賞を受賞するなど「時代劇の申し子」と呼ばれるようになり、ドラマの大ヒットとともにヨ・ジングの存在も注目を集めた。また、どちらの作品にも子役時代のキム・ユジョンが出演しており、ヨ・ジングとともにあどけない姿を見せながらも、当時から両者のポテンシャルの高さが垣間見えているのも興味深いところだ。

 こうして数多くの主人公の少年時代を演じてきたヨ・ジングに、転機が訪れる。2013年公開の映画『ファイ 悪魔に育てられた少年』で、誰かの少年時代を演じるのではなく、自身が初主演を務めることとなったのだ。

 ヨ・ジング初の主演映画『ファイ 悪魔に育てられた少年』は、幼い頃連れ去られ、5人の殺人強盗集団に殺人犯になるべく育てられた17歳のファイが、ある日自身の過去を知ることにより、復讐を決意するというバイオレンス映画だ。主人公ファイをヨ・ジングが演じ、『チェイサー』などのキム・ユンソクと『最後まで行く』などのチョ・ジヌンらが殺人強盗集団に。『シスターズ』などのナム・ジヒョンも出演している。

 撮影当時、まだ15歳だったというヨ・ジング。ファイの5人の“父親”たちによる異質な成育環境や、残酷な生い立ちを知ることでの心の叫びをこれでもかというほど鬼気迫る演技で圧倒し、実力派の先輩俳優たちをものともしない凄みを見せる。実の母親が入院する病院へ行き、ハンカチを渡しながら初めて「オンマ」と呼びかけるシーンは胸に詰まるほど。

 激しい暴力や殺人などの残忍なシーンがあるためR指定となり、主演作というものの、公開当時はまだ観ることができなかったというヨ・ジングだが、そんな年齢だったとは思えないほどの終始圧巻の芝居を見せた同作で、第33回韓国映画評論家協会賞新人男優賞、第34回青龍映画賞最優秀新人男優賞ほかを獲得。さらに底知れぬ演技力が知れ渡った。

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