映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』が北米首位 ホラー映画として歴代3位に

人気ホラーゲーム原作映画が北米で大ヒット

 近年のハリウッドにおいて、ハロウィンといえばホラー映画である。ユニバーサル・ピクチャーズとブラムハウス・プロダクションズは、過去2年にわたって『ハロウィン KILLS』(2021年)と『ハロウィン THE END』(2022年)を北米で公開。同シリーズが完結した2023年は、新たな企みとともに10月末を迎えた。

 10月27日~29日の北米映画週末ランキングは、ユニバーサル&ブラムハウス製作による同名人気ホラーゲームの映画版『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』が初登場No.1を獲得した。廃墟と化したピザレストラン「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」を舞台に、夜間警備員のマイクが恐怖のマスコットたちと対峙する……。

映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』特報映像

 PG指定で幅広い客層にアプローチした本作は、週末3日間で7800万ドルというスマッシュヒットとなった。事前に予想されていた5000万ドルを大きく上回り、2023年公開のホラー映画としては最高のオープニング記録を樹立。また、ホラー映画全体では『IT/イット』2部作に次いで歴代第3位、ビデオゲームの映画版としては『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)に次ぐ史上第2位の滑り出しとなっている。

 驚くべきは、本作が『ハロウィン KILLS』『ハロウィン THE END』と同じく、NBCユニバーサルの映像配信サービス・Peacockにて同時配信されていることだ(厳密には配信開始が1日先行した)。劇場公開と配信の同時展開作品としても、『ブラック・ウィドウ』(2021年)に続く史上第2位の初動成績を記録している。

 さらに、『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は北米のみならず海外市場でも高い人気を証明。海外市場では5257万ドルを記録し、世界累計興収は早くも1億3057万ドルとなった。ホラー映画としては2023年最高、またブラムハウス作品としても『ハロウィン』(2018年)を超えて史上最高のオープニングとなっている。

 さまざまな記録を打ち立てている本作だが、ヒットの裏側にあるのは、やはり原作となったゲームの人気と、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキに影響を受けないマスコット中心のプロモーション、そして若い観客をターゲットにした戦略だろう。Rotten Tomatoesでは批評家スコア26%と厳しい成績だが、観客スコアは89%、また出口調査に基づくCinemaScoreでも「A-」評価と、観客の人気はきわめて高い。

 ホラー映画は2週目で数字を大きく落とす傾向もあるが、このように観客の支持が大きい作品は口コミ効果にも期待できる。しかしPeacockでの配信も行なわれているため、そちらに潜在的な観客が流れてしまう可能性もあり、今後の動きはいささか読みにくいのが実情だ。もっとも製作費は2000万ドルとローコストだから、ユニバーサル&ブラムハウスとしては完全勝利といってよい。ハロウィン映画の新たな金字塔シリーズとなるか? 日本では2024年2月9日公開だ。

『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』©2023 Trafalgar Releasing. ALL RIGHT RESERVED.

 今週の第2位は『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』。3週目にして首位を譲ったが、木曜日から日曜日しか上映しないという週末限定戦略はなおも有効と言うべきだろう。週末3日間で1470万ドルを記録し、北米興収は1億4934万ドル、世界興収は2億304万ドルとなった。

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(画像提供:Apple TV+)

 第3位は、マーティン・スコセッシ監督&レオナルド・ディカプリオ主演『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』。公開2週目で900万ドル、前週比-61.3%とかなり激しい下落となった。スコセッシ&ディカプリオに加え、ロバート・デ・ニーロも参加した話題作だが、興行収入がいまひとつ伸び悩んでいるのは、やはり3時間26分の長尺かつ時代モノというジャンル、そしてストライキによるプロモーション不足が要因と考えられる。

 ただし先週も指摘したように、製作・配給のAppleはまったく別の指標で本作の興行収入を捉えていると思われ、この数字をほかの作品群と同じように受け止めるべきではなさそうだ。もっとも通常の映画興行ならば、製作費2億ドルに対して北米興収4067万ドルという結果は非常に厳しい。作品の評価はきわめて高いが、映画賞シーズンに向けて興行面でも巻き返すことができるか。

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』北米2位発進 Appleの野心的映画ビジネスが始まる

巨匠監督マーティン・スコセッシと、レオナルド・ディカプリオが6度目のタッグを組んだ映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が1…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる