『大奥』蓮佛美沙子&佐津川愛美の命をかけた“反撃” 男女の立場がまたもや逆転する

『大奥』仲間由紀恵が屈辱的な最期を迎える

 だが、熊痘が広まり始めると当然のごとく治済の耳にも噂が届く。もはや家斉が自分の思い通りにならないことが分かった治済は、恐ろしいことに御台もろとも毒入りの菓子で葬りさろうとするのだった。しかし、彼女は愛する子供を失った母親の執念を甘く見ていたことで、茂姫とお志賀の方(佐津川愛美)から返り討ちに遭う。表向きは対立しているように見せかけ、裏で手を組んでいた2人は毎日少しずつ治済の食事に毒を盛っていたのである。

 どんな理由であったとしても、将軍の母を殺したとあれば御台とてただでは済まないだろう。毒味役を担っていたお志賀も必然的に毎日毒を摂取しており、その場で血を吐いて息絶える。どちらも最初からその覚悟で、“化け物退治”に踏み出したのだ。全ては復讐のため。そしてこれ以上、自分たちのように子供を亡くして苦しむ母親を生まないため。手段は違えど、家斉と目指すべきところは同じだった。

 しかし、家斉は優しすぎるがあまりに母を見殺しにはできず、「たとえ化け物でも母は母」として虫の息だった治済をお匙に診させる。結果的に治済は一命を取り留めたが、体を動かすことも言葉を発することもできなくなり、寝たきりの状態に。退屈を嫌うが故に人を殺めてきた彼女にとっては、むしろその方が屈辱的だったのではないだろうか。

 その後、熊痘接種は正式に公儀直々の施策となり、男子の数は急激に増加。赤面を恐れることなく動けるようになったことで、男女の立場はまたもや逆転する。男子による家督相続が広まり、才ある女たちが表に出られなくなったことは皮肉としか言いようがない。また、その中で治済から化け物の血を引いた徳川家慶(髙嶋政伸)のように、今度は立場ある男が女を食い物にする状況も生まれてくる。だが、忘れてはならない。人を絶望に陥れる者もいれば、そこから人を掬い上げる者もいるということを。「医療編」はこれにて完結。次週からは「幕末編」が始まり、ついに物語は完結に向かっていく。

■放送情報
ドラマ10『大奥』Season2
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:
【医療編】
鈴木杏(平賀源内)、玉置玲央(黒木)、村雨辰剛(青沼)、岡本圭人(伊兵衛)、中村蒼(徳川家斉)、蓮佛美沙子(御台・茂姫)、安達祐実(松平定信)、松下奈緒(田沼意次)、仲間由紀恵(一橋治済)
【幕末編】
古川雄大(瀧山)、愛希れいか(徳川家定)、瀧内公美(阿部正弘)、岸井ゆきの(和宮)、志田彩良(徳川家茂)、福士蒼汰(天璋院・胤篤)
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
音楽:KOHTA YAMAMOTO
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

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