橋本環奈が刑事ドラマの定番にノーを突き付ける 『トクメイ!』のハイコンテクストな構造

『トクメイ!』のハイコンテクストな構造

 刑事の勘と経費削減は矛盾するものではなかったが、第2話で湯川と円を翻弄し、両者の緊張関係を生み出す上で大いに貢献したのが爆弾犯の沼田を演じた山脇辰哉だ。迷惑犯の矢島(小倉史也)を使って捜査をかく乱し、刑事の勘を疑う円に対して湯川を劣勢に立たせた。山脇といえば、連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)で、主人公が暮らす十徳長屋の貧乏東大生として作品にコメディ要素を注入したことは記憶に新しい。『トクメイ!』でも視線や表情の動き一つで疑念を生じさせ、記憶に残る芝居を体現していた。

 円に上司の須賀(佐藤二朗)が差し入れで持たせたおにぎりは、橋本がヒロインを務めることが発表された2024年度後期の朝ドラ『おむすび』(NHK総合)を意識しているようでもある。刑事ドラマへの温故知新も含めて、一見するとゆるく見える『トクメイ!』のベースには、過去作を参照しながら多様な文脈を取り込むハイコンテクストな構造がある。それだけに才気煥発の助演陣を生かしきれず、笑いを狙いながらうまく伝わっていないのが惜しい。

 とはいえ、まだ第2話。「腹の中が最初から見えてたほうがいいのかもしれないけど、見えてないほうが楽しいかもしれない」という須賀の台詞もあった。特命を受けた円がもう一つの顔、匿名の脅迫者Xのキャラクターを秘めているように、納豆クレープのような意外な組み合わせや、おにぎりの具のチョコレートのような隠し玉があることを期待したい。

■放送情報
『トクメイ!警視庁特別会計係』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:橋本環奈、沢村一樹、松本まりか、JP、前田拳太郎、徳重聡、佐藤二朗ほか
脚本:荒木哉仁、皐月彩
演出:城宝秀則、光野道夫、湯浅真
プロデューサー:近藤匡、小林宙
音楽:大友良英
主題歌:SEVENTEEN「今 -明日 世界が終わっても-」(HYBE JAPAN)
オープニングテーマ:LEEVELLES 「地獄の沙汰も愛次第」(ユニバーサルミュージック/Virgin Music)
制作著作:カンテレ、共同テレビジョン
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/tokumei/
公式X(旧Twitter):@tokumei_ktv

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる