『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』北米2位発進 Appleの野心的映画ビジネスが始まる
そもそも、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』はAppleの存在なしに成立しない企画だった。当初はパラマウント・ピクチャーズが単独で配給を務める予定だったが、高額の製作費に尻込みしたパラマウントが離脱を検討していたところ、Appleが共同で出資と配給を務めることで製作に漕ぎつけられた作品なのだ。その結果、本作はAppleとしても自社史上最高の公開規模となった。
日本国内でのプロモーションが手薄なのが不思議なほど、現在のApple TV+は映画・ドラマともにオリジナル作品が充実しており、そのクオリティにも定評がある。今後は劇場公開される長編映画の製作に年間10億ドルを投じる計画で、リドリー・スコット監督&ホアキン・フェニックス主演の『ナポレオン』や、マシュー・ヴォーン監督&ヘンリー・カヴィル主演『Argylle(原題)』も控えているのだ。
すなわち『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、映画館での興行を最重要視しないという、従来の映画ビジネスとはまるで異なった方法で映画界に殴り込みをかけるAppleの勝負作なのである。全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキは配信作品の報酬にも関連しているが、スト終結後、Appleの戦略はハリウッドにどんな嵐を巻き起こすことになるだろうか。
そのほかランキングの第5位には、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)の製作30周年を記念する再上映がランクイン。第8位には、インド発のタミル語スリラー映画『Leo: Bloody Sweet(英題)』が初登場した。『囚人ディリ』(2019年)と『ヴィクラム』(2022年)に続くローケーシュ・カナガラージ監督のシネマティック・ユニバース第3作で、原案はデヴィッド・クローネンバーグ監督『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005年)。北米720館で公開され、すでに460万ドルを稼ぎ出す人気ぶりとなっている。
北米映画興行ランキング(10月20日〜10月22日)
1.『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』(→前週1位)
3100万ドル(-66.6%)/3855館/累計1億2978万ドル/2週/AMC
2.『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(初登場)
2300万ドル/3628館/累計2300万ドル/1週/パラマウント
3.『エクソシスト 信じる者』(↓前週2位)
560万ドル(-49%)/3323館(-361館)/累計5420万ドル/3週/ユニバーサル
4.『パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー』(↓前週3位)
445万ドル(-35.4%)/3364館(-343館)/累計5606万ドル/4週/パラマウント
5.『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』30周年記念再上映(初登場)
410万ドル/1650館/累計410万ドル/1週/ディズニー
6.『Saw X(原題)』(↓前週4位)
358万ドル(-36.9%)/2756館(-302館)/累計4723万ドル/4週/ライオンズゲート
7.『ザ・クリエイター/創造者』(↓前週5位)
260万ドル(-40%)/2490館(-470館)/累計3675万ドル/4週/20世紀スタジオ
8.『Leo: Bloody Sweet(英題)』(初登場)
205万ドル/720館/累計460万ドル/1週/Prathyangira Cinemas
9.『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』(↓前週7位)
110万ドル(-43.5%)/1600館(-690館)/累計4090万ドル/6週/20世紀スタジオ
10.『The Blind(原題)』(↓前週8位)
88万ドル(-45.3%)/1059館(-106館)/累計1569万ドル/4週/Fathom Events
(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは10月23日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)
参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2023W42/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/killers-flower-moon-box-office-taylor-swift-eras-tour-1235624156/
https://variety.com/2023/film/box-office/box-office-scorsese-killers-of-the-flower-moon-opening-weekend-taylor-swift-stays-first-1235764365/
https://deadline.com/2023/10/box-office-taylor-swift-killers-of-the-flower-moon-1235579033/
https://deadline.com/2023/10/indie-box-office-leo-bloody-sweet-anatomy-of-a-fall-dicks-musical-persian-version-1235580232/
■公開・配信情報
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
世界同時劇場公開中、近日Apple TV+にて世界同時配信
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、ジェシー・プレモンス、リリー・グラッドストーン、タントゥー・カーディナル、カーラ・ジェイド・マイヤーズ、ジャネー・コリンズ、ジリアン・ディオン、ウィリアム・ベルー、ルイス・キャンセルミ、タタンカ・ミーンズ、マイケル・アボット・ジュニア、パット・ヒーリー、スコット・シェパート、ジェイソン・イズベル、スターギル・シンプソン
脚本:エリック・ロス、マーティン・スコセッシ
プロデューサー:マーティン・スコセッシ、ダン・フリードキン、ブラッドリー・トーマス、ダニエル・ルピ
エグゼクティブプロデューサー:レオナルド・ディカプリオ、リック・ヨーン、アダム・ソマー、マリアン・バウアー、リサ・フレチェット、ジョン・アトウッド、シェイ・カマー、ニールス・ジュール
画像提供:Apple TV+