『ロキ』シーズン2最速レビュー! 物語の鍵を握るのは “ウロボロス”?

『ロキ』シーズン2最速レビュー!

ロキとメビウスのタッグが最高! “ウロボロス”に注目

『ロキ』シーズン2 ©︎2023 Marvel

 さて、ストーリーはというと、シーズン1がシルヴィとロキの冒険だったのに対し、今回はメビウスとロキが行動を共にすることが多い。第1話では、シルヴィによって蹴り出された場所が、過去のTVAであることを知るロキ。そこで自分が本来存在すべき現在と過去を“時間移動”してしまう。彼の不安定な状態をどうにかするのがこの第1話なのだが、メビウス(現在)と再会してからの会話は深刻なストーリーを少し明るいものにしてくれる。真面目な顔をしながらもウィットに富んだセリフが飛び交う空気感の面白さは、やはりウィルソンによる貢献が強い。それでいて、ロキを現在に留めるために危険な目に遭うことを承知で、二人で力を合わせたり、時間切れになりそうなロキのために必死でウロボロスに掛け合ったりする様子から、メビウスとロキのフレンドシップがより強固なものになっていることに気付かされ、なんだかその事実だけで泣けてしまう。誰にも信じてもらえないロキにとって、そしてメビウスにとっても、そんな大切な存在ができたこと。シーズン2のロキは、シルヴィを失ってしまったところから物語が始まるが、彼は独りじゃない。これまでのマーベルシリーズを追って“ロキ”というキャラクターを見守ってきたからこそ、感慨深さがある。

 独りじゃないからか、本シーズンでのロキの精神的な成長は計り知れない。特に人生を失ったことへの怒りを抱えるシルヴィに対する態度において、それが窺える。第1話のミッドクレジットシーンでは、“在り続ける者”を殺した後のシルヴィの行方が描かれた。過去のアメリカで、彼女はマクドナルドに入る。そして提案されたメニューを「全部試したい」と言うのだ。TVAが人生に関わってこなければ当たり前にできたはずのことができなかったという“当たり前”がマクドナルドで表現されている点が何ともアメリカンなのだが、本シーズンでは“在り続ける者”を殺した後も取り戻せない、失った時間について悩み怒り続けるシルヴィの心情も大きなテーマになってくる。そして自分のことばかり考える彼女に対して、ロキはそれを否定もしないが、それと同時に自分たちの犯した行動の報いと、大勢を救うことに目をむける必要があることを諭す。そこには『アベンジャーズ』で“ニューヨークを破壊した自己中心的なヴィラン”という、かつての彼とは真逆の思考。本シーズンにおいてロキの心情の揺れは大きくフォーカスされていて、それを体現するヒドルストンの演技が素晴らしすぎるからこそ、より彼の気持ちがダイレクトに感じられるようになっている。

 ロキだけではなく、TVAの真実を知ったハンターB-15(ウンミ・モサク)のキャラクター成長も凄まじい。TVA職員は全員がさらわれ、記憶を失くして行動をしていた。しかもその行動……神聖時間軸を“守ろう”としてやってきた「剪定」は、その時間軸に生きる人間の大量虐殺に過ぎなかったことがわかる。その重大さを、B-15をはじめとするメインキャラクターが理解しているからこそ、本シーズンにおける彼らの行動、その動機の重みが強調されている。だから、ショッキングで胸が痛むシーンも少なくはないのだが、その中で光り輝く宝石みたいな存在が、他でもないキー・ホイ・クァン演じるウロボロスなのである。

『ロキ』シーズン2 ©︎2023 Marvel

 ロキとメビウス、そしてそこにウロボロスが加わったシーンの俳優陣のケミストリーが良過ぎて、良い意味で“混ぜるな危険”的な楽しさがある。ウロボロスがメカや時間移動について説明するシーンの、何を言っているか全然わからないけれども意味がわかるようなあのセリフの応酬も面白いし、『グーニーズ』で発明好きのリッキーを演じていたクァンだからこそのキャラクターなのも良い。どうしたって愛されキャラになってしまうウロボロスだが、彼のその名前が実は本シーズンの“象徴”になりそうな気がしてならない。

 「ウロボロス」とは古代のシンボルであり、自分の尾を噛んで環になったヘビの絵としても知られている。それが意味するものは、例えば循環性や永続性、無限性と“時間的”なものが多いのだ。第1話では“時間”をテーマにしたドラマらしく(しかし、意外とこれまでやってこなかった)“タイムトラベルものあるある”を描いている。過去に飛んだロキがウロボロスと話した瞬間に、現在のウロボロスの記憶が更新されていく様子や、時間オーラ抽出機が作られる過程、そして未来のTVAに飛んだロキがそこで見た、いずれ現在になる光景。まるで環になった蛇のように、全てが巡ってそれぞれの時間に影響を与え合っているのだ。そう考えると、本シーズンのキーアートもグルグルと走るそれぞれのロキが象徴するものが、“ウロボロス”のように見えてくる。ちなみに北欧神話ではミッドガルド(マーベルの世界で言えば地球)を、自らの尾を噛んで取り巻く幻獣「ヨルムンガンド」が登場する。そしてなんとそのヨルムンガンドは、ヨトゥンヘイムで育てられたが主神オーディンがいずれ神々の脅威になると予見し、海に捨てた蛇だった。それが海底に横たわったまま、自分の尾をくわえてミッドガルドを取り巻くほど成長したのである。つまりウロボロスは、ヨトゥンへイム育ち、父親はオーディンなロキと、実は非常に関わりが深いシンボルなのだ。

『ロキ』シーズン2 キーアート ©︎2023 Marvel

 第1話では、ラヴォーナ・レンスレイヤー(ググ・バサ=ロー)と“在り続ける者”の謎多き関係にも言及されている。もともとのコミックでは何を隠そう、征服者カーンの恋人キャラの彼女が、本作ではどのように描かれるのかも注目したい。そしてシーズン1のラストで“在り続ける者”側であり、レンスレイヤーと共に行方をくらませたミス・ミニッツの“恐ろしい”本性も必見。何から何まで緻密に作り込まれているからこそ、毎週の配信前に何度も前話を見直したくなるような作品になることだろう。紆余曲折があるマーベル・シネマティック・ユニバースにおいて、本作が確固たる“マスターピース”となる予感がする。

『ロキ』シーズン2|特報|Disney+(ディズニープラス)

■配信情報
『ロキ』シーズン2
ディズニープラスにて、10月6日(金)独占配信
『ロキ』シーズン1は全話独占配信中
©︎2023 Marvel

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