『ロキ』シーズン2最速レビュー! 物語の鍵を握るのは “ウロボロス”?

『ロキ』シーズン2最速レビュー!

 マーベルファンお気に入りの“悪戯の神”が戻ってきた。とはいえ、ドラマ『ロキ』シリーズにおけるロキは、元々が北欧神話の神だったことを忘れてしまうほど人間らしい。そしてシーズン2では、より彼の感情に触れることができる。脚本と映像、美術など、全てにおいて前シーズンを凌駕する『ロキ』シーズン2の最速レビューと考察を届けたい。

衝撃的なシーズン1のラスト

『ロキ』シーズン1 ©︎2023 Marvel

 シーズン1のラストといえば、マーベルの世界において大変なことが起きてしまった。「時の終わり」にやってきたロキ(トム・ヒドルストン)と“別の時間軸のもう一人のロキ”シルヴィ(ソフィア・ディ・マルティーノ)。彼らは、闇の監視組織TVAを創設した31世紀の科学者だった“在り続ける者”(ジョナサン・メジャース)と出会い、神聖時間軸についての真実を知らされた。長い期間TVAの管理をしてきた彼は、ロキとシルヴィに仕事を引き継いでもらうことを提案。しかし、ロキの制止も虚しく、人生を奪われたシルヴィは怒りに任せて“在り続ける者”を殺してしまった。MCUの世界にマルチバースが解き放たれ、ロキはシルヴィによって全く違う時間軸に飛ばされてしまう。

 誰からも信じてもらえないロキ、誰も信じることのできないシルヴィ。ロキは勇気を出してもう一人の自分を愛そうとしたが、シルヴィの取った行動は彼の心を砕いた。そして自分を知るメビウス(オーウェン・ウィルソン)もいない世界に飛ばされてしまったことで、ロキの精神がかなり不安定な状態で終わってしまったシーズン1。シーズン2では、よりロキの感情の揺れがトム・ヒドルストンの繊細な目と表情の演技で表現される。「“在り続ける者”を失ったTVA」をテーマに繰り広げられる物語は、タイムリミット付きのハラハラしたサスペンスから、“自由意志”について考えさせられるディープなヒューマンドラマ、バディもののコメディなど、幅広い魅力を輝かせた。

こだわりの新チームによる、一切妥協のないカメラワークとディテール

『ロキ』シーズン2 ©︎2023 Marvel

 シーズン2は、シーズン1と比べてよりダークなストーリーであると同時に、ショットを含む作品全体の雰囲気が違う。監督はケイト・ヘロンから、『ムーンナイト』を手がけたジャスティン・ベンソン&アーロン・ムーアヘッドのコンビに、脚本は『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』のマイケル・ウォルドロンから、シーズン1に参加したエリック・マーティンが担当する。ホラー作品を手がけてきたベンソンとムーアヘッドのキャリアが、本作にも生かされているように思う。そして撮影スタイルや美術もシーズン1より洗練され、こだわりを強く感じる。全体的に映像にフィルムグレイン(粒子ノイズ)が使われていることで、よりフィルム感が増している。どれだけ凄いメカニックが出てきても、VFXが使用されても、それをパリッとした映像でなく、ザラついたヴィンテージっぽい質感で捉えるからこそ、作品全体の空気感が統一されているのが良い。

 特に第1話にはシンメトリーのショットが多用され、レトロなカラーパレットも最高にお洒落なので、つい“ウェス・アンダーソン的”と言ってしまいそうだ。アンダーソン監督作の多くに出演し、長年作品を共に作り上げてきた俳優オーウェン・ウィルソンの存在感もあるため、余計にそう感じるのかもしれない。カメラワークも、ゆっくりとしたズームイン・ズームアウトが多用されていて、時にはシリアスな展開の中のシュールなコメディ要素も引き立っていた。

『ロキ』シーズン2 ©︎2023 Marvel

 美術に関しては、特に新キャラクターのO.Bことウロボロス(キー・ホイ・クァン)がいる設備管理部から1900年代のセットまで、とにかくディテールが作り込まれている。本作からアートディレクターのスーパーバイザーに『ラストナイト・イン・ソーホー』や『ロケットマン』を手がけたティム·ブレイクが、シニアアートディレクターに『TENET テネット』のリアム・ジョージェンセンが参加していることが、作品のトーンの変化に影響を与えているのかもしれない。衣装も素晴らしくて、あらゆる装いを着こなしていくロキや、シーズン1からガラッと雰囲気の変わったシルヴィのファッションスタイルにもぜひ注目してほしい。

※以降、『ロキ』シーズン2第1話のネタバレを含みます。

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