『あまちゃん』『エール』から『ブギウギ』へ 朝ドラに欠かせない“音楽の力”を振り返る

朝ドラに欠かせない“音楽の力”を振り返る

 神木隆之介主演の連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)が最終回を迎えた。モデルとなった植物学者・牧野富太郎の人生をただなぞるだけではなく、ただひたすら植物を愛し、追いかけてきた槙野万太郎(神木隆之介)の壮大な冒険物語として再構築した同作。その道すがら出会う冒険者たちも色とりどりの草花に負けず劣らず魅力的で、丈之助(山脇辰哉)の演劇論で言うところの“幻”になってしまうのが実に寂しい。一方で、視聴者が喪失感に浸る間もなく、週明けには次の物語が幕を開けるのが朝ドラの良いところ。10月2日からは、趣里がヒロインを務める『ブギウギ』が早速スタートする。

『ブギウギ』趣里、異例の主題歌参加の理由が明らかに “父”柳葉敏郎は『紅白』を意識

NHK連続テレビ小説第109作『ブギウギ』の記者会見が9月8日にNHK放送センターにて開催され、主演の趣里をはじめ、柳葉敏郎、澤…

 本作は、「ブギの女王」と呼ばれた昭和の大スター・笠置シヅ子をモデルにしたオリジナルストーリー。今なお愛され続ける「東京ブギウギ」や「買物ブギー」など数々の名曲とともに、歌に踊りに向き合いながら、大正から昭和へ激動の時代を駆け抜けたヒロイン・花田鈴子(趣里)の笑顔を届ける。おそらく多くの人が最も楽しみにしているのは、趣里の歌声だろう。趣里は鈴子が披露する劇中歌はもちろんのこと、中納良恵(EGO-WRAPPIN’)、さかいゆうと共に主題歌も担当する。

 近年の朝ドラは歌と、切っても切り離せない密接な関係だ。特に顕著だったのが、宮藤官九郎が脚本や劇中歌の歌詞を手がけた『あまちゃん』。同作でヒロイン・アキ(能年玲奈・現のん)の母である春子を演じた小泉今日子が歌った劇中歌「潮騒のメモリー」は実際にシングルとしてリリースされ、初週7.8万枚を売り上げる大ヒットとなった。春子はかつてアイドルで、音痴な大女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の影武者を引き受けたという設定。しかし、最終週では鈴鹿が音痴を克服し、実際は圧倒的な歌唱力を持つ薬師丸が同曲を披露する場面は多くの感動を呼んだ。アキとその親友・ユイ(橋本愛)によるアイドルユニット“潮騒のメモリーズ”からはじまり、小泉、薬師丸が歌いつないでいく『第64回紅白歌合戦』でのパフォーマンスも印象深い。番組ではアキが所属したアイドルグループ“アメ横女学園芸能コース”の曲「暦の上ではディセンバー」もスペシャルビッグバンドの演奏と共に披露され、お茶の間は大盛り上がりとなった。東日本大震災前後の東京と北三陸を舞台にした同作。大いに笑って、大いに泣けるストーリーとともに、キャストたちが歌う劇中歌は日本の復興の道を照らしたのである。

『あまちゃん』が名作と呼ばれる理由 朝ドラの“様式美”を踏襲した作劇の凄さを読み解く

本放送から10年を記念し、『あまちゃん』がNHK BSプレミアムで再放送中だ。BSでの再放送は2015年に次いで2度目だが、SN…

 薬師丸といえば、『エール』で彼女が披露した賛美歌「うるわしの白百合」についても触れざるを得ない。作曲家・古関裕而をモデルにした同作では、主人公である裕一(窪田正孝)の妻・音を演じた二階堂ふみをはじめ、山崎育三郎、小南満佑子、古川雄大ら、実に多くのキャストが劇中で歌唱を披露した。中でも圧巻の歌声で視聴者の心を揺さぶったのは音の母・光子に扮した薬師丸。終戦を迎えたその日、空襲で焼けた瓦礫の中で光子が賛美歌を歌うシーンは薬師丸本人の案によるものだったそう。戦争で失われた命を弔うとともに、日本の再起を願う力強さも感じさせるその歌声に心打たれた人も多いことだろう。また『エール』は本編ではなく、特別編としてキャスト総出演によるコンサートでフィナーレを飾ったことでも話題に。劇中では歌唱シーンがなかった堀内敬子や吉原光夫も見事な歌声を響かせ、まるで『紅白歌合戦』のような豪華さだった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる