『ゾン100』は社会人にこそ沁みる物語 ゾンビ×現代社会人に込められたメッセージを読む

『ゾン100』は社会人にこそ沁みる物語だ!

「いつから忘れていたんだろう……世界ってこんなにも、鮮やかな色に満ち溢れていたんだな」

 作中で、輝がこのセリフをしみじみとつぶやくシーンがある。本作では、作風においても“絶望的な状況”を逆に“ポジティブな視点”で楽しむ輝のテンションが反映されており、そのポップでカラフルな色彩感こそが、本作を従来のゾンビ作品とは思えない特別なものにしている。

 また、輝が「やりたいこと」リストを実行していく上で、「やってみないと分からない」がしっかりと表現されていたところも秀逸だ。「キャンピングカーに乗る」にしても様々な車種があったり、「ツリーハウスを建てる」にしても必要な知識や、学ぶ相手がいたりと「やりたいこと」を主人公と叶えていく爽快感の中に“リアル”がちゃんと混ざっているのだ。

 この世には数多くのゾンビ作品が存在しているが、本作のように上手くコメディの中に「現代社会人に向けた社会風刺」と「やりたいことに向き合うこと」がコメディの中に上手く結びつけられている作品はそう多くないだろう。

 そして、忘れてはいけないのは、能天気な輝に対して世界は着実にゾンビに侵略されているということ。今後の輝たちの「やりたいこと」を消費する旅の展開を楽しみにしつつ、視聴者である私たちも自分の「やりたいこと」に向き合ってみるのもいいかもしれない。

■放送情報
『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと』
MBS/TBS系にて、毎週日曜17:00~放送
出演:梅田修一朗、楠木ともり、古川慎、髙橋ミナミ
原作:麻生羽呂・高田康太郎(小学館『月刊サンデーGX』連載中)
監督:川越一生
副監督:上田華子
シリーズ構成:瀬古浩司
キャラクターデザイン:田中紀衣
ゾンビデザイン:福地純平
音楽:宮崎誠
選曲:合田麻衣子
音響制作:dugout
アニメーション制作:BUG FILMS
制作:小学館集英社プロダクション
©︎麻生羽呂・高田康太郎・小学館/「ゾン100」製作委員会
公式サイト:https://zom100.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/Zom100_anime_JP

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