『ゾンビランドサガ』アイドルアニメの奥深さを証明 異色でありながら王道なストーリーに
いま、アニメ界は空前のアイドルブームを迎えている。男性向けには『THE IDOLM@STER 』シリーズや、『ラブライブ!』シリーズなど、女性向けには『うたの☆プリンスさまっ♪』などが人気を集め、最近では競走馬を擬人化した『ウマ娘 プリティーダービー』が爆発的な大ヒットを記録している。
そしてついにゾンビがアイドルになるという、前代未聞のアイドルアニメ『ゾンビランドサガ』の続編である『ゾンビランドサガ リベンジ』の放送が始まった。『呪術廻戦』などで高い人気を集めるアニメ制作会社MAPPAの手がける作品とあり、注目度は高い。
『ゾンビランドサガ リベンジ』は2021年4月に放送が開始されたテレビアニメだ。若くして亡くなった少女たちがゾンビとして現代に蘇り、アイドルユニット『フランシュシュ』としてアイドル活動を行なっていく、コメディタッチが多めのアイドル作品となっている。
タイトルにあるサガとは、壮大な歴史物語などを示すサーガから来ている……かと思いきや、舞台が佐賀県であることに由来している。ご当地アニメとしての面白さもあり、フランシュシュの面々が日々のレッスンを行う唐津市歴史民俗資料館江をはじめとして、多くの佐賀県に存在する場所や施設が舞台のモデルとなっている。
1期目にあたる『ゾンビランドサガ』は2018年の10月から12月にかけて放送され、人気を博した。1話の冒頭から主人公の源さくらがトラックに轢かれてしまうという、衝撃のスタートが勢いのあるコメディ描写となり大きな話題を呼ぶ一方で、それらの描写を伏線とし、後々の物語で回収する物語の手腕も高く評価された。
ゾンビがアイドル、佐賀県が舞台、コメディタッチというとまるでギャグ作品のようではあるが、作品のテーマは深い。ゾンビという死者である点に着目し、すでに人生が終った者として敗北者であるフランシュシュのメンバーが、ふたたび表舞台で輝くまでを描き上げる。
そしてそれが佐賀県を舞台にしていることにもつながる。佐賀県はその他の県からも注目を集めることは少ない、少し地味な県として認知されているのではないだろうか。そのような盛り上がりの少ない県の町おこしを兼ねて、這い上がるフランシュシュのメンバーの奮闘ぶりが、作品に独特の熱量を巻き起こした。その結果、聖地巡礼などのイベントの盛り上がりもあり、経済効果を考えても地域密着アニメ作品の成功例といえるだろう。
その独特の熱量を象徴するのが1期の『ゾンビランドサガ』の第2話で披露される「DEAD or RA!!!」だろう。ゾンビがアイドルなんて不可能だと語る元暴走族だった二階堂サキと、アイドルとして活動しようとするさくらのラップバトルが繰り広げられる。その流れで佐賀をディスることにより、輝く佐賀県を応援しようという意気込みが伝わってきた。
アイドル作品の根底にあるのは“誰かを応援しよう”という気持ちだ。苦境にある人々、あるいは頑張れない人々を応援する。そして自身もまた人々の応援をもらい、輝いていく。そういった両者の応援によって、みんなのアイドルとして人気を得ていくサクセスストーリーこそが魅力だ。今作ではゾンビ、佐賀という2つの面から立ち上がる、さらに輝かせるという異色でありながらも、王道なストーリーが大きな話題を呼んでいる。