『すずめの戸締まり』はおかえり上映で真に完結する 新海誠の“ネタバラシ”で深まる解釈

『すずめの戸締まり』はおかえり上映で完結

 さらにエンドロール時に流れる副音声には、「おかえり上映用」に収録されたコンテンツが追加。この「おかえり上映」は、物語内で描かれるすずめたちの旅と同じく、2023年9月25日から9月29日にかけての期間を挟む形で設定されている。新海監督は副音声の中で、満月であることが「常世への条件」という裏設定を持っていることを明かし、「すずめが岩手にたどり着く物語のクライマックスを2023年の9月29日に結びつけた」と述べた。実際に子ども時代のすずめが現実に戻るときには扉の後ろに大きな満月が映り込んでおり、納得感のあるネタバラシに大きくうなずいてしまう。

 月の満ち欠けが扉の開閉にも見えることから、この設定が生まれたそうだが、本作では新海監督らしい印象的な「空」のシーンは月に関連づけられていたようだ。なお、2023年の9月29日は「中秋の名月」にあたり、1年の中でも最も美しいとされる満月が空に輝く日。こうした現実世界の出来事とリンクする描写は、新海誠作品の魅力の一つでもある。

 もうひとつ、『すずめの戸締まり』のエンドロールでは、すずめがマフラーを巻いて自転車に乗る場面があるが、新海監督は「すずめのマフラーの巻き方」にも特別な意味が込められていることを強調していた。“すずめの子ども時代に関連している”という点のみ書いたところで、このマフラーの話については、ぜひ劇場で草太の追加された台詞とともに聞いていただきたい。

 ここまでオーディオコメンタリーの中身に触れてきたが、紹介した情報は全体のごく一部である。私たちを待っているのは、新海監督の並々ならぬ作品愛に満ちた121分だ。今回の「おかえり上映」は、新たなカットを追加した再上映にとどまらず、新海監督の独自のビジョンによる「完全版」の公開と言っても過言ではない。上映終了までにはまだ間に合う。それでは、すずめに「ただいま」を言いに行く準備をしようではないか。

■公開情報
「Blu-ray&DVD発売記念『すずめの戸締まり』“おかえり上映”」
9月20日(水)〜10月5日(木)全国100館にて上映
原作・脚本・監督:新海誠
出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、松本白鸚
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:土屋堅一
美術監督:丹治匠
音楽:RADWIMPS、陣内一真
主題歌:「すずめ feat.十明」RADWIMPS
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
制作プロデュース:STORY inc.
配給:東宝
©︎2022「すずめの戸締まり」製作委員会
公式サイト:https://suzume-tojimari-movie.jp/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/suzume_tojimari
公式Instagram:https://www.instagram.com/suzumenotojimari_official/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@suzumenotojimariofficial

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