『ノキドア』検事射殺事件の悔しい結末 “倒理”松村北斗と“氷雨”西畑大吾が禁断の扉の先へ

『ノキドア』倒理と氷雨が禁断の扉の先へ

 “言い訳”を覚えたのは、いつのことだろう。幼いころは、バレてもいないのに「ごめんなさい」と謝り、きちんと反省をしていたような気がする。しかし今では、バカ正直に生きている人を見て、「融通が効かないなぁ」なんて心のなかで揶揄するようになってしまった。自分が間違っていることを認めたくなくて、つい先回りして言い訳を考えてしまうこともある。本当は、「間違いを認めない。それこそがいちばんの間違い」だと分かっているはずなのに。

「人は、間違える生き物なんだよ。だからこそ、同じ過ちを繰り返さないために、間違えた時が大事なんだよ」

 『ノッキンオン・ロックドドア』(テレビ朝日系/以下『ノキドア』)第8話。御殿場倒理(松村北斗)の言葉を聞いて、さまざまなことが頭のなかを駆け巡った。もしも、検察官・片桐道隆(朝井大智)が自分が出した判決を間違っていたと認めていたら……。真相に近づいたNPO団体の設立者が、真犯人に殺されることもなかったし、上野美貴(市川由衣)が復讐を試みることだってなかった。そもそも、片桐が妻・佳代子(入山法子)の忠告を聞けるような夫だったら、こんな事件にはなっていなかったのだ。

 思えば、年齢を重ねるごとに、「ごめんなさい」を言うことが減っているような気がする。それはきっと、大人は他人との関係を築くのがうまいから。間違いを指摘すれば、相手を傷つけるかもしれないし、波風が立つ可能性だってある。それなら、じっと堪えて、その場を穏便にやり過ごした方がいい。きっと、佳代子はそう思いながら生きてきたのではないだろうか。そして、片桐はイエスマンな妻とずっと一緒にいることで、間違いを認めない癖がついてしまっていた。

 今回の検事射殺事件に関わっている3人(片桐・佳代子・美貴)は、全員が被害者であり、全員が加害者だと思う。片桐は言わずもがな“悪”だが、美貴だって人を殺してしまった以上、“悪”に割り振られる。“正義”の殺しなど、この世には存在しないのだ。これまで、料亭放火殺人事件で冤罪をかけられてしまった人物のために、“正義”を尽くしてきたはずの美貴。そんな彼女のラストが、このような形になってしまったことが、悔しくてたまらない。また、美貴が事件を起こした直後に、検察が再審を審議し出すというのも、なんとも皮肉である。

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