『RRR』のTV初放送を見逃すな! S・S・ラージャマウリ監督作品の“凄い画”の原点とは?

『RRR』のTV初放送を見逃すな!

 インドだけに留まらず、日本が、世界中が湧き上がった超大作映画『RRR』のWOWOWでのTV初放送が決定! それに伴い「インドのヒットメーカー ラージャマウリ監督特集」(以下:「ラージャマウリ監督特集」)として、『マガディーラ 勇者転生』『マッキー』『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ 王の凱旋』といった過去作品も放送・配信される。

 そんな『RRR』を手掛けた監督、S・S・ラージャマウリとは……。今やインド映画界、テルグ語映画界(トリウッド)という枠組みを超えて、世界的に有名になった監督だ。

 第95回アカデミー賞において『RRR』の作中曲で、タレント発掘番組『ビッグ・ボス・テルグ』シーズン3の優勝者ラーフル・シプリガンジが歌う「ナートゥ・ナートゥ」が最優秀歌曲賞を受賞したことも記憶に新しいが、それは突然の快挙というわけではない。実はその以前から、すでにアメリカやヨーロッパ、アジアにおいてインド映画自体の流通規模というのが2010年代後半から徐々に上がってきていたのだ。

『RRR』©️2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.
『RRR』©️2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

 2013年には『チェンナイ・エクスプレス 〜愛と勇気のヒーロー参上〜』や『チェイス!』2014年には『バンバン!』といった世界市場を視野に入れた作品も続々と制作されるようになり、世界中がインド映画に注目。ヴァイアコム(パラマウント、MTVなどの親会社)やディズニーといった大手企業も続々とインド映画市場に進出するようになった。

 そこに『バーフバリ』シリーズがそれぞれ全米興収ランキングに入り、その話題性も絶大だったこともあり、ラージャマウリのブランドは確立されていった。つまり世界におけるインド映画市場の基盤と流れを作ったひとりでもあるラージャマウリの作品がアカデミー最優秀歌曲賞を受賞したというのは、今までの功績も考慮すると、当然ともいえる。なんなら作品賞などの主要部門でノミネートされてもいいほどだ。

『バーフバリ 王の凱旋』<完全版>©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
『バーフバリ 王の凱旋』<完全版>©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

 例えばアメリカにおけるインドの大作映画の上映規模というのは、スクリーン数が600~800というのが相場。現在日本でも公開中の『PATHAAN/パターン』の場合は約700スクリーン、『ブラフマーストラ』も約800スクリーンでの上映であった。それに対して『RRR』の場合は、約1200スクリーンで上映されており、アメリカのインド映画上映館数としては、快挙といえ、このスクリーン数を見ただけでもラージャマウリブランドの凄さがわかるはず。日本のように地道にロングラン上映を繰り返して……というよりは、短期間に上映されて、のちに配信サービスに移行されたのだが、それでも全米で初週興収3位という記録を打ち立てたほど。ちなみに全米初週興収を超えるのに日本は100日以上かかっているというのだから、アメリカでも圧倒的な人気があることは明確だ。『RRR』を実際に観たマスコミやセレブたちの間でも「#RRRForOscars」という投稿が話題となった。

 しかし『バーフバリ』のイメージだけではそれほどの成績をあげることはできなかっただろう。しかし『RRR』も大ヒットを記録したということは、それだけ期待値を超えたものがあったからに違いない。世界中でインド映画の興収を更新し続けているラージャマウリブランド。そもそも何がそこまで世界を魅了しているのだろうか……。

 魅力を細かく挙げていったらきりがないかもしれないが、確実に言えることは、インパクト絶大な圧倒的“画力”だといえるだろう。ラージャマウリ作品はどれをとっても“画力”に満ち溢れている。本来であれば、アクション映画に使うべきワードではないのかもしれないが、フォトジェニックともいえる。どのシーンを切り取っても、それが画になるのだ。すでに販売されているブロマイドなどは商品化しやすかっただろう。それは『RRR』に限らず、『バーフバリ』シリーズはもちろん、『マッキー』や『マガディーラ 勇者転生』、などの作品を観ても感じるはずだ。

『マッキー』©M/s. VARAHI CHARANA CHITRAM
『マッキー』©M/s. VARAHI CHARANA CHITRAM

 インド映画と一括りに言っても、地域や言語、文化が全く異なるのだから、インド映画監督も娯楽作品中心に制作するシッダールト・アーナンド、ローヒト・シェッティもいれば、娯楽とドラマの間で揺らぐカラン・ジョーハル、ストーリーを大切に描いていくパン・ナリン、インドの社会問題を反映した社会派なアヌバウ・シンハー、尖った作品を連発してくるアヌラーグ・カシャプなど、監督によって個性は様々。

 ちなみにWOWOWでは、「『RRR』がやってくる!インド映画傑作選」として、『エンドロールのつづき』『ムトゥ 踊るマハラジャ』『ガリーボーイ』『マダム・イン・ニューヨーク』『きっと、うまくいく』『ハーティー 森の神』の6作品も放送・配信される予定となっている。

 例えば『ガリーボーイ』は、インドにおけるヒップホップの在り方、イメージを変え、アングラジャンルだったヒップホップをメジャーシーンに持ち上げたことでも知られており、何より監督のゾーヤー・アクタルは、まだまだ女性が活躍していなかった頃からインド映画界で活躍し、保守的な概念を突き崩してきた監督であるし、『マダム・イン・ニューヨーク』のガウリ・シンデーも国際的な視点をもった女性監督である。

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