劇団ひとり×真木よう子×門脇麦にとってアドリブ劇とは　『横道ドラゴン』の壮絶な裏側語る

物語とお笑いに対する純粋な気持ちに突き動かされて

ーー真木さんと門脇さんにしてみれば、こうしたアドリブ劇へのご出演はなかなかない経験だったと思います。即興の天才とも言われる劇団ひとりさんとバディを組まれてみて、いかがでしたか？

門脇：ひとりさんとは、監督を務めていらっしゃったNetflix映画『浅草キッド』以来の共演でした。そのときは監督という立場もあり、難しい表情をされていたイメージがあって。また違った毛色の作品でご一緒させていただくということで、現場入りするまですごくドキドキしていました。

ひとり：アハハ。そうは見えなかったけどなー（笑）。

門脇：でも、実際にアドリブシーンをご一緒させていただいたときは、安心感がハンパじゃなかったです。私がどれほど予想外のフリにあたふたしても、ひとりさんは、何だかんだで役を貫いていらっしゃる。その佇まいを指針に、無茶なアドリブを乗り越えられたと言っても過言じゃないです。ふざけるにしてもさじ加減が難しいですからね。とにかく困ったときはひとりさんの動きを察知して、何となく、その周りを跳ね回ることに徹していました。

真木：私も、本当に申し訳ないくらい、ひとりさんに頼らせてもらっていました。ひとりさんがどう動くかで、自分の動き方を決めていたといいますか。困らせられながらも適宜、助けられていましたね。ただ途中から、ひとりさんには見えないよう、私たちからもひとりさんに仕掛けるよう、スタッフから指令が飛んできたんです。ホッとしました。指令があるだけで、自発的におふざけを仕掛けることができたので。積極的になれたときは、やっぱり楽しかったです。

ーー逆にひとりさんから見て、お2人のアドリブ演技はいかがでした？

ひとり：僕が評価するのも何ですが、無茶なアドリブにも真っ直ぐ向き合ってくれるお2人だったので、バディとしてすごく心強かったです。実際、芸人やバラエティタレントなど、僕のフィールドに近いゲストばかりだったので、2人にとってやりづらい現場だったことは確か。お2人とも、やりながら、この仕事を受けたことを後悔していたはずです。でも僕としては、絶対に2人を無傷なまま帰したくなかったんです（笑）。どうせ後悔するなら、もっと後悔させてやろうと、とにかく2人にフリまくりました。相当困らせたと思いますけど、それでもお2人とも、逃げるそぶりを一切見せずに全て受け止めてくれた。だからこそ、僕も遠慮なく振る舞えたんだと思います。お2人の勇気には感謝ですね。

ーー突き抜ければ、後悔もプラスになりますもんね。

真木：アハハ。おっしゃる通りですね。今後、この作品以上に無茶を要求されることはないはずだと思うと、撮影を終えた後に謎の自信が湧いてきました。ちょうど撮影期間中に舞台をやっていたんですけど、決められた演出の中で与えられたセリフを言うのがつまらないとすら思うようになって、逆に困ったほどです。

ひとり：ワハハハ。刺激が足らなくなってきた。

門脇：私はもともと子どもの頃の学芸会が楽しすぎてお芝居の道に進んだ、みたいなところがあるので、プロフェッショナルな大人たちと手探りで作品をカタチにしていくこと自体が楽しくて仕方なかったです。どんな天才脚本家にも思いつかないラストになったと思うので、是非とも最後まで見届けてほしいですね。

真木：もはや刑事ドラマではないですけどね。それぞれ思い描くラストがあっても、互いに邪魔をしあうから、全然向かいたい方向に向かえなくて（笑）。

ひとり：ちゃんと物語を終結させなければいけないという意味でも、最終話のアドリブシーンがいちばん難しかったですよね。ちゃんとラストを迎えられているのか分からないですけど、どうかお見苦しい場面も温かい目で楽しんでいただけたら幸いです（笑）。

ーー配信が楽しみです。最後にひとりさん、改めて本作に出演された感想を教えてください。

ひとり：アドリブ劇の醍醐味を再実感させられる現場でしたね。アドリブだからこそ、お芝居の域を超えて、演者と本気でぶつかり合える瞬間があるっていうか。何だか分からないけど、やみくもに突っ走ってしまう。不思議なことに、そのアドリブがピタッとお芝居にハマる。これが気持ち良いんですよ。ただ、うまくいくのは10回中の1回程度。一度うまくいったからといって、同じ勢いで気持ち良さを求めようとしたら、必ず失敗します。この難しさが面白いんですよね（笑）。

ーーそれは、お芝居はともかくバラエティの感覚とも違うんでしょうか？

ひとり：違いますね。アドリブ劇の場合は、バラエティ的な要素もありつつ、物語としての面白さも同時に求められるわけですから。どちらか一方に意識が傾くと、アドリブがカラ回りして白けてしまう。バランスが大事ですよね。お芝居やバラエティに比べて、アドリブ劇には正解と呼べるものがほとんどないんです。物語とお笑いに対する純粋な気持ちに突き動かされてこそのアドリブ劇です。その正解のない世界でいかに笑いを生み出せるか。僕は、アドリブ劇のそんなところに魅了されているんだと思います。

■配信情報
『横道ドラゴン』
DMM TVにて配信中（全6話）
出演：劇団ひとり、真木よう子、門脇麦、岡田義徳、永野宗典、小手伸也、岩崎う大（かもめんたる）、小峠英二（バイきんぐ）、ヒコロヒー、ふせえり、狩野英孝、真空ジェシカ、国崎和也（ランジャタイ）、大久保佳代子（オアシズ）、錦鯉
企画・総合演出：橋本和明
脚本：上田誠（ヨーロッパ企画）
©DMM TV
公式サイト：https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=2k7xkt6igev8yqbfqn9m7hrfi

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