前原滉、前原瑞樹、山脇辰哉 “万太郎の友人”として『らんまん』で株を上げた俳優たち
前原瑞樹/藤丸次郎役
前原瑞樹が演じる藤丸次郎もまた、万太郎の植物研究仲間だ。繊細で心優しい性格の持ち主で、たびたび彼の言動が万太郎の心をも動かしてきた。思わず涙が込み上げてしまったのは筆者だけではないだろう。前原の柔らかな声によるセリフ回しには、他者の心を包み込む力がある。じつにいい俳優だ。
そんな前原は前作『舞いあがれ!』(NHK総合)の終盤も終盤で登場。彼ならもっと見せ場を作ることができたはずだと勝手に悔しがっていたものだが、あれは本作の布石にもなっていたように思うし、そもそも途中から参加の出演者が作品の世界観にうまく溶け込めているところにこそ俳優としての力量が問われるものだ。
演劇領域でキャリアをスタートさせた前原は、良質な小劇場演劇には数多く出演しているが、ドラマや映画への出演はまだ多くはない。だが、これから引く手あまたになることは間違いないだろう。
山脇辰哉/堀井丈之助
万太郎と同じ十徳長屋で生活をしていた文学青年・堀井丈之助を演じているのは山脇辰哉。彼が朝ドラに出演するのはこれが初めてのことであり、ここに挙げた三名の中ではもっとも気鋭の若手だ。しかし、飄々とした性格の堀井を軽妙に演じてみせ、すでに山脇に心を掴まれている視聴者は少なくないだろう。
本作の公式ガイド『連続テレビ小説 らんまん Part1』(NHK出版)にて山脇は、「堀井丈之助という人は、『生活』や『他者』に対しての興味や関心が人一倍高く、それらを『おもしろいこと』として受け止めている人物だと思います」と自身の演じるキャラクターを分析している。登場するたびに堀井が見せる万太郎たちとのやり取りは、まさにそうだった。どんな些細な事象でも“おもしろいこと”に変えてみせる人物だった。彼の存在は万太郎の好奇心をさらに助長させるものでもあったのではないだろうか。
映像作品への参加はいま少しずつ増えているところだが、人気劇団ハイバイや、劇作家・加藤拓也が岸田國士戯曲賞を受賞した劇団た組の『ドードーが落下する』などに参加しており、今後が非常に楽しみな俳優だ。山脇自身が企画・原案・主演を務めた『明けまして、おめでたい人』など、ますます目が離せない存在となっていくはずである。
さて、ここでは『らんまん』で確実に株を上げた3名の俳優に触れてみたが、あなたが選ぶなら誰だろうか。ぜひ今作での出会いを機に、彼ら彼女らの活躍を追いかけてほしいものである。その先にはきっと、また新たな愉快な出会いが待っている。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK