『マイ・エレメント』トップ3に再浮上 ディズニーの方針にも変化の兆しが?

ディズニーの興行方針に変化の兆し?

 先週末の動員ランキングは、『キングダム 運命の炎』が週末3日間で動員21万3100人、興収3億1400万円をあげて4週連続で1位となった。累計成績は動員289万9000人、興収41億6900万円。2019年4月公開の『キングダム』は最終興収57.3億円、2022年7月公開の『キングダム2 遥かなる大地へ』は最終興収51.6億円と、2作続けて興収50億円の大台を超えているが、このペースだと今回の『キングダム 運命の炎』の前作超えはほぼ確実、1作目を超えてシリーズ最高興収を記録する可能性も出てきた。作品を重ねるごとに興収が目減りしていくことが多い国内フランチャイズ作品にあって、超優良フランチャイズ作品が誕生したと言っていいだろう。

 今回注目したいのは、前週の5位から2ランクアップ、公開3週目にしてトップ3に返り咲いたピクサー・アニメーション・スタジオ作品『マイ・エレメント』だ。公開2週目以降も高い水準での推移を続けていて、先週末3日間の動員は18万3000人、興収は2億4100万円。累計成績は動員133万5000人、興収17億400万円となっている。『マイ・エレメント』の健闘は公開前の当コラム(鍵となるのはファミリー層? 夏休み興行後半戦の行方を占う)でも触れたように、ジブリ新作の『君たちはどう生きるか』が思いのほか子供にはとっつきにくい作品であったことから、ファミリー層の受け皿になったことも要因の一つと考えられるが、それだけではないだろう。

 実は『マイ・エレメント』の驚異的な粘り腰興行は、日本だけの現象ではない。日本公開の約2ヶ月前、6月16日に北米で公開された際は、その出足の悪さから主要映画メディアに「ピクサー危機説」まで報じられた同作だったが、作品の評判が広まるにつれて異例のロングヒットに。移り変わりの激しい北米ボックスオフィスにおいて、8週連続でトップ10をキープした。

 また、『マイ・エレメント』は先週末の段階で、今年世界中で大ヒットを記録した『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の世界興収3億590万ドルを超える世界興収3億720万ドルに到達。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』がそこまで大ヒットしなかった日本の観客からするとあまり実感がわかないかもしれないが、両作の公開初週の世界的な盛り上がりの差をふまえると、『マイ・エレメント』の持続力と広がり方がいかに異例の出来事かがわかる。

 ピクサー作品の配給元であるディズニーは、昨年まで劇場公開の6〜7週後にディズニープラスで新作を配信してきたが、『マイ・エレメント』に関しては北米公開から10週近く過ぎた現在もディズニープラスでの配信日のアナウンスをしていない。ある程度の長期間、劇場で公開され続けることは映画にとって重要であり、そうした環境、及び観客との信頼関係がなければロングヒットは実現しない。今回の『マイ・エレメント』の世界的大ヒットは、ディズニーの経営方針にとっても大きなターニングポイントになりそうだ。

■公開情報
『マイ・エレメント』
全国公開中
監督:ピーター・ソーン
プロデューサー:デニス・リーム
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/my-element

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