『こっち向いてよ向井くん』赤楚衛二が刻む“誠実な男のリアル” 別れの決断に感じた成長
ただ、10年前から根本的な結婚に対する方向性の違いがある。今回の向井くんの発言も、10年以上考えが変わらない33歳の美和子にとってはプライドが傷ついた程度のことかもしれないが、美和子の虚勢をぶち破る質問をしたことで美和子が結婚観を吐露したことは、やはり意味があった。向井くんが迷うように、美和子が迷うのは普通なことだし、関係を壊さず続けることもありだ。ただ、向井くんに対し元カレと断言しているのが、個人的にはずるいと感じてしまう。同じ結婚観の人を選べば良いのに、まだ迷っているという理由で優しく顔の良い男に依存するズルさ、要は向井くんは保険だ。
赤楚の演技が本当に魅力的で、赤楚が演じる役といえば誠実で悩ましき男という印象がある。今作ではその誠実さが不器用さとして裏目に出るダメ男として活かされ、そのアドバンテージがあったからこそ、悩んで悩んで今回の別れを告げるシーンでの相手を思って訴えるシーンがとても自然だった。本当に決断を感じさせる切なさと、心強さを感じさせてくれた。また、生田も自然体の演技が良く、この2人の関係がリアルというより生々しい。
ただ、物語を通して向井くんにとって止まり木は、洸稀のように見える。洸稀は環田和哉(市原隼人)を思っているのだが、美和子が登場してからは向井くんによそよそしく、向井くんも恋愛感情はないのだが、何かあってまず思うのが洸稀と話したいということ。この心を満たす友情関係は、体の関係がないだけで美和子が向井くんに求めていた関係性に近いものがある。そう考えると、見方によっては向井くんも実は残酷なことをしているのではないか。ただこれも男女の友情は成立するかという価値観によって見方が変わってくる。過去のトラウマを払拭した向井くんはいったいどこへ行くのだろうか。
■放送情報
『こっち向いてよ向井くん』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:赤楚衛二、生田絵梨花、岡山天音、藤原さくら、財前直見、森脇健児、内藤秀一郎、上地春奈、岩井拳士朗、若林時英、田辺桃子、久間田琳加、市原隼人、波瑠
原作:ねむようこ『こっち向いてよ向井くん』(祥伝社フィールコミックス)
脚本:渡邉真子
演出:草野翔吾、茂山佳則ほか
音楽:FUKUSHIGE MARI
チーフプロデューサー:三上絵里子
プロデューサー:鈴木将大、柳内久仁子、妙円園洋輝
協力プロデューサー:福井芽衣
制作協力:AX-ON、ダブ
製作著作:日本テレビ
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