『らんまん』万太郎が田邊教授にたむける“植物学の未来” 涙なしでは聞けない聡子の言葉

『らんまん』涙なしでは聞けない聡子の言葉

 田邊教授(要潤)が亡くなった。衝撃的な訃報とともに始まった『らんまん』(NHK総合)第102話、万太郎(神木隆之介)は彼から大きなものを託される。

 田邊教授にされたことはたくさんある。それでも万太郎は彼を尊敬することをやめなかった。彼が成し遂げたことは立派で偉大なものであり、藤丸(前原瑞樹)が言うように、ただ政治と人間関係という学問に本来なら干渉しないはずの要因によって排除されてしまった。大学が真っ先に行ったことは、田邊教授の色を消し去ること。そのやるせなさを抱えたまま、私たちは田邊教授自身さえもが、この世から消し去られてしまったことを受け止めきれない。

『らんまん』第102話

 葬儀は身内だけ、弔問も一切断るというのは生前のゴシップなどが関係して野次馬が多いからだろうと予想がつく。万太郎をはじめ、藤丸たちも田邊に別れを告げられなかったことを悔しく思った。そしてしばらくし、聡子(中田青渚)が長屋を訪れた。子供たちが元気よく遊び、近所の人に遊んでもらったり、面倒を見てもらったりしている。長屋という“コミュニティ”を目の当たりにして「心強いものですね」と言った聡子の言葉は、彼女にそういった周りの助けや話し相手がいなかったこと、夫の田邊しかいないような孤立した生活だったことを思い起こさせる。そして今は、その夫もいなくなってしまった。

「旦那様ね、生きようとされていたんです。私と、子供たちと、そしてこの子と。これから思う存分、生きようとされていたんです」

 聡子を演じる中田青渚の静かだが熱のこもった素晴らしい物言いの演技も相まって、このセリフの力強さが増す。やっと“自由に旅ができる”。政府のしがらみも、政治も、大学の人間関係からも全て解放された先にあったものが、家族と過ごす時間だった。それが失っていた、本来の自分を取り戻す時間であり、彼にとっての自由な人生の旅だったことを考えると、涙を抑えきれない。

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