『らんまん』失意の要潤を支えた中田青渚の言葉 新種発見で交錯する田邊と万太郎の運命
高等女学校が廃止されたことで校長を退任した田邊(要潤)は、鬱屈とした気持ちを酒でまぎらわせる。『らんまん』(NHK総合)第99話で、失意の田邊が光明を見出したのは植物学だった。
文部大臣の森有礼(橋本さとし)が暗殺され、文部省は学制改革の名目で女学校を廃止。後ろ盾をなくした田邊は、学内の出世レースから後退する。肩で風を切る勢いだった田邊は、さぞ落胆しているだろうと思われたが、予想に反し、気分を一新して日々の研究に取り組んでいた。
田邊を支えたのは妻の聡子(中田青渚)だった。自暴自棄になる夫を、聡子は「これでようやくご自分のことに打ち込める」となだめる。学問をするために渡米し、日本人で初めてコーネル大学に入学。「この国で一番最初に植物学を修めた」田邊が、やりたかった学問に戻れるのだと。「旦那様が始めた学問には続く方たちがいます。あなたが始めたんです」と力を込めた。
聡子が持ち出したのはシダだ。シダへの言及から透けて見えるのは、聡子が田邊に寄せる信頼である。田邊が愛するシダは花や果実をつけない。かつて地上の植物を支配したシダは、種子植物の繁栄を横目に粛々とその命をつないでいる。地味かもしれないが、静かに独自の存在を主張するそのありようを、聡子もまた愛していたのだ。
聡子の強さと聡明さに打たれた。後添いとして田邊家に嫁いだ当初、女中や先妻の子に遠慮していた聡子は、自らの意志で家族を守り、夫の窮地を救うまでになった。押しかけた野次馬に毅然と対応する姿は凛々しかった。