『18/40』瞳子と重なる深田恭子自身の魅力 選択を迫られ続ける女性のやるせなさを表現

『18/40』瞳子と重なる深田恭子の魅力

 20歳以上年齢差のある女性2人が主人公の『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)。キュレーターになるという夢に向かう最中、突然の妊娠が発覚する18歳の仲川有栖(福原遥)と、現代アートを扱う会社でアートスペシャリストとして大活躍の成瀬瞳子(深田恭子)だ。彼女らは姉妹ではなく血縁関係もないが、思いがけない出会いから共同生活をするようになる。

 瞳子は自力で購入したタワマンに住み、お洒落だって手を抜かず仕事に全力投球。最初は広告代理店に勤務していたが、もっとアートに関わる仕事がしたいと今の会社に転職し、めきめきと頭角を現した。後輩女性にとっても憧れの存在で、会社の皆から誕生日をフロアで盛大に祝われるほどだ。それにも変に恐縮したり卑屈になることがない。彼女の活躍を面白く思わない男性部長から嫌味を言われようとどこ吹く風で、「いくつになっても皆に祝ってもらえるのは嬉しいですよ」と軽やかにあしらう。嫉妬深い異性からの嫌味にも挫けず、かと言って男性嫌悪になるわけでもなく、とてもフラットで健やかな精神を保っている。

 マッチングアプリで出会った同年代の男性とも建設的な意見を交わし、最初から子どもを望むのであれば、プレコン(プレコンセプション)チェックをし合う約束をする。しかしそのプレコンチェックで、瞳子は自身が抱える婦人病と卵巣機能の低下、卵子の残数が減少していることを突きつけられ、点滴部屋で声を上げて泣き出す。真っ直ぐで素直な人だ。何も悪いことなんてしていないどころか、一生懸命キャリアを積み、真面目に生きてきただけなのに、生きていくだけで失われていくものがあるのが女性のあまりに切ないところだ。そして本人が望むと望まざるとにかかわらず、常に選択を迫られ続ける所以でもある。

 カーテンの向こうで子どもを身篭ってしまったことに戸惑う有栖に、「じゃあ、その子、私に頂戴!」と咄嗟に口走ってしまい、訂正する瞳子。この問題というのは、自分の子を望む女性にとってはそれほど切実なことだ。この2人の姿が、女性がいかに“全て”を手に入れることが難しいか、女性だけに課されてしまった宿命ややるせなさに想いを馳せずにはいられない。

 ただ、実際にこんなことがあればなかなかにホラーな展開だとは思うが、深田演じる瞳子の裏表のなさやひたむきさ、他力本願ではなく自ら道を切り開いてきたこれまでの積み重ねがあって、見事回避できていた。深田はこれまでも『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)や『ダメな私に恋してください』(TBS系)でもいわゆるアラサーの“こじらせ女性”を演じていたが、本作の瞳子も恋に疎いのは同じながら、最も自己主張がはっきりしている。

 それは自らが欲しいものが明確で、きちんとそれに手を伸ばし掴み取ってきた瞳子ゆえだろう。思えば、深田が多数の後輩や部下を抱えるポジションを演じること自体かなり珍しい。仕事の成果が認められても自分だけの手柄とせずに「皆が頑張ってくれたおかげ」だと事もなげに言えてしまえる瞳子はとっても魅力的な上司だ。

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