『VIVANT』タイトルの謎が解明もさらなる種明かしに期待? 大陸への憧憬と地政学的視点

『VIVANT』大陸への憧憬と地政学的視点

 別班は非公式に設立された自衛隊の秘密組織で、言うなれば諜報機関である。スパイ天国と呼ばれ、米軍基地が全国に配置された日本で国際テロが起きない理由は、影の組織である別班が暗闘し、テロを未然に防いでいるからだと野崎は言う。公安、CIAなどそれらしいキーワードは登場したが、陰謀論とも取られかねない想像力の飛躍をこうもストレートに投げつけられると、困惑を通り越してフィクションとしてありではと思ってしまうから不思議である。

 現代世界の地政学的な見取り図とともに、全編に漂うのが歴史ロマンの一面だ。古来より大陸から文物がもたらされ、人々が往還していた日本で、アジアそして大陸への憧れは郷愁をともなって語られる。シルクロード、遣唐使、仏教伝来、近現代の戦火の悲惨な歴史を経て、大陸は物心両面で近い場所にあり、文学をはじめ映像作品に多彩なモチーフを提供してきた。日本とつながりの深いモンゴルでロケが行われていることは象徴的で、オリエンタリズムを脱却した新しい時代の関係構築の機運が本作にも影響しているように見える。

 そういった複合的な視点の上で成立する『VIVANT』は、多彩なキャストと視覚・聴覚に訴える刺激を携えており、多方面に広がりのある作品と言えそうだ。

■放送情報
日曜劇場『VIVANT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、Nandin-Erdene Khongorzul、渡辺邦斗、古屋呂敏、内野謙太、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、二宮和也、櫻井海音、Martin Starr、Erkhembayar Ganbold、真凛、水谷果穂、井上順、林遣都、高梨臨、林泰文、吉原光夫、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵、橋爪佳織
原作・演出:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈
音楽:千住明
製作著作:TBS
©︎TBS

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