『うる星やつら』“沼”に引きずり込まれる! ポップな仕上がりから感じる制作陣のこだわり

『うる星やつら』に感じる制作陣のこだわり

 フジテレビの深夜アニメ専門枠「ノイタミナ」で、目下『うる星やつら』が放送中だ。原作は高橋留美子が描いた同名漫画で、1978年から1987年まで約9年に渡って雑誌連載された。宇宙から来た押しかけ女房のラムと、軽薄かつ浮気性な諸星あたるを中心に様々なキャラクターが入り乱れるコメディ作品として、連載期間中の1981年にはテレビアニメ化。以後、数々の劇場用長編とオリジナルビデオアニメも制作されたアニメ版は、初代チーフディレクターを務めた押井守監督のフィルモグラフィーとして重要な位置づけになっている。そんな『うる星やつら』が再アニメ化!という情報が2022年1月に解禁され、高橋留美子ファンや1981年のアニメ版を知る世代からは、驚きと喜びの声が挙がったのだ。

TVアニメ『うる星やつら』ノンクレジットOP 【MAISONdes「アイウエ feat. 美波, SAKURAmoti」】| 毎週木曜日24時55分からフジテレビ"ノイタミナ"ほかにて放送中!

 1981年放送の『うる星やつら』(以下、81年版と表記)は、現在のようにキャラクターの絵柄が平均的に統一される総作画監督制のアニメではなかったので、各話ごとに担当する作画監督や担当パート毎のアニメーターの個性が画面に強く出るのが特徴だった。これは本作のみに限った話ではなく、1980~90年代のテレビアニメの大半が、アニメーターの絵の癖がそのまま本編に反映されていたのだ。トラブルメーカーの二枚目キャラ・面堂終太郎の登場回「面堂はトラブルとともに!」(放送第14回)で、面堂のスカイダイビングシーンでメリハリの利いたハイレベルな作画がクローズアップされ、同シーンを担当したアニメーター・山下将仁にアニメファンの注目が集まることとなった。このように突出したシーンや、個性的なキャラ作画を通して、それぞれのアニメーターが月刊アニメ誌で特集されるのも、当時のアニメの楽しみ方のひとつだったのだ。

 81年版は、それまでのギャグアニメよりもハイテンポ、ハイテンションで、もともと原作が持つポテンシャルの高さも相まって、あっという間に大人気アニメと化し、放送開始の翌々年に初の劇場版『うる星やつら オンリー・ユー』(1983年)、その翌年には劇場第2作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)が公開された。『ビューティフル・ドリーマー』で描かれる、夢か現実か?と不可思議な世界観で展開する物語は、押井守監督のその後の作品群の原点ともいえる作風で、今なお高い評価を得ている。81年度版はチーフディレクターやシリーズ構成担当、制作スタジオの変更を交えながらも5年間にわたる放送を成し遂げた。オープニング&エンディングのタイトルバックを手がけた南家こうじや、キャラクターデザインの高田明美、アニメーターの森山雄治、西島克彦、土器手司などは、このアニメを通じてアニメファンに広く知られたと言っても過言ではないだろう。南家こうじは既にNHK『みんなのうた』で知る人ぞ知るアニメーターではあったが、81年版『うる星やつら』のヒットから、『スプーンおばさん』(1983年)、『あんみつ姫』(1986年)などのオープニングアニメを次々と制作するようになった。

 さて、2022年度版の『うる星やつら』だが、ブラウン管テレビ、ラジカセ、ダイヤル式の黒電話といった小道具が出てくるところから、舞台設定は原作が発表された1980年代として描かれているようだ。一方でオープニングタイトルでは、あたるがスマートフォンを使っていて、他のキャラクターが両手にサイリウムを持ってオーバーに踊る“オタ芸”を見せるなど、2022年の今に合わせたポップな映像に仕上げている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる