『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』北米No.1も厳しいスタート 若年層の集客に苦戦

『インディ・ジョーンズ』北米1位も苦戦か

 実写大作映画の苦戦が北米で続いている。DC映画『ザ・フラッシュ』の想定外の失敗も記憶に新しい中、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(以下、『運命のダイヤル』)も厳しいスタートを強いられた。6月30日~7月2日の週末興行収入ランキングではNo.1に輝いたものの、3日間の興行収入は6000万ドル。製作にかかったコストを鑑みると、極めて苦しい初動というほかない。

 本作は、ハリソン・フォード主演『インディ・ジョーンズ』シリーズの第5作にして、フォードがインディアナ・ジョーンズを演じる最後の作品。『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)以来およそ40年の物語を締めくくる一作だが、オープニング成績は前作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)の1億13万ドルに及ばず、シリーズ記録の更新はならなかった。

 もっともディズニー/ルーカスフィルムも、過去最高の滑り出しを期待していたわけではなかったようだ。事前の予測では3日間で約6500万ドルを稼ぎ出す見込みだったため、6000万ドルという数字は期待にやや及ばなかった程度。問題は、海外市場でもさほど華々しいスタートにならなかったことと、本作に約4億ドルもの高額が費やされていることだ。

 現時点で、『運命のダイヤル』は海外興収7000万ドルを記録しており、世界累計興収は1億3000万ドル。イギリスやフランスに続き、日本が470万ドルという初動で海外市場の第3位にランクインして、日本での『インディ・ジョーンズ』人気を証明した。しかしながら、巨大市場の中国では230万ドルと苦戦し、興行全体に追い風を吹かせるには至っていない。

 一方、これまで2億5000万~9500万ドルとみられていた製作費は、最新の報道によれば3億ドル以上にのぼっていた模様。コロナ禍による製作の遅延と中断、フォードの出演料、そしてスティーヴン・スピルバーグに代わって監督・脚本を務めたジェームズ・マンゴールドへの報酬などが起因しているという。これに加え、宣伝・広報には約1億ドルが費やされた。

 このように情報を整理すると、『運命のダイヤル』は『ザ・フラッシュ』の国内オープニング成績(5504万ドル)にこそ勝利したが、海外市場および全世界の初動成績では敗れたことになる。また、『ザ・フラッシュ』の製作コストは本作より約1億ドル少なかったのだ。どちらも興行的に厳しい状況に立たされている以上、この2作を比較することにさしたる意味もないのだが……。

 『運命のダイヤル』が苦戦した背景には、若い観客を劇場に導けるほどの強い訴求力がなかったこと(この3日間は観客の42%が45歳以上だった)、ワールドプレミアとなったカンヌ国際映画祭での評価が今ひとつで、結果的にネガティブな印象を招いたことなどが挙げられる。コロナ禍を経た今、大人向けの映画に観客が集まりにくい傾向は変わっておらず、本作もその影響を被った。若年層やファミリー層の心をつかみ、新旧ファンが劇場に押し寄せた『トップガン:マーヴェリック』(2022年)がいかに奇跡的だったかということでもあろう。

 しかしながら、まだ希望がないわけではない。本作は観客からの評価が高く、Rotten Tomatoesでは批評家スコア68%に対して観客スコア88%を記録。出口調査に基づくCinemaScoreでは「B+」評価にとどまったが、別の調査では観客の93%が肯定的な評価を示した。

 さらに7月4日は独立記念日で祝日のため、週末に劇場を訪れることができなかった観客たちが集まることも考えられる。6月30日~7月4日の5日間では、北米興収8200万ドル、世界興収1億5200万ドルを見込んでいるのだ。『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』が7月12日に北米公開を迎える以上、それ以前にどれだけの数字を上げられるかがポイントとなる。

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