『どうする家康』築山殿事件が決着 有村架純演じる瀬名は戦国のジャンヌ・ダルクだった?

『どうする家康』瀬名はジャンヌ・ダルクか

 「こんなのアリか」と、40代以上の視聴者が多い筆者の周辺はザワザワしている。

 『どうする家康』(NHK総合)第24回「築山へ集え!」の展開についてである。家康(松本潤)の正妻である築山殿こと瀬名(有村架純)が、「もう戦はしたくない」という嫡男の信康(細田佳央太)のために、敵である武田勝頼(眞栄田郷敦)の家臣と密約を結んだ。

 その密約というのが、これまで描かれてきたような、築山殿が自分と信康の命を保証してもらうことを条件に勝頼に協力するということではなく、家康の領国である三河と遠江、駿河、甲斐、そして相模の北条までを巻き込んだ壮大な計画だった。それらの国で不戦協定を結び、農産物や鉱産物を取引して足りないものを分け合い、同じ通貨を使うという、いわばEU経済圏のようなシステムを作ろうというのである。そうすれば無用な戦はなくなるというのが、瀬名がいろんな女性と話しながら温めてきたビジョンだった。

 家康へ「(この考えは)あなたさまの中にもあったもののような気がします」という瀬名。もともと戦嫌いだった家康もこのムーブメントに賛同する。しかし、信長(岡田准一)が天下を支配しようとしているタイミングでは無謀で危険すぎる作戦であり、この謀(はかりごと)は信長にバレ、いよいよ7月2日放送回で瀬名は死んでしまうらしい。そして、後に江戸幕府を開く家康が瀬名の思想を受け継いでいく……という展開になりそうだ。

 松本潤、有村架純がインタビューでも明かしているように(※1)、3話をかける築山殿事件は、脚本の古沢良太が歴史を独自に解釈して描くこの作品最大のポイントだ。築山殿をこれまでの大河で描かれてきたような悪妻、夫に見捨てられた哀れな女性ではなく「ジャンヌ・ダルクのような女性」(※2)として描く。自分の理想を追求し、周囲を導いた女性ということだろうか。

 たしかに、この大河は一貫して、ただ夫や父や兄に従うのではなく、自分で道を切り開く女性を描いてきた。まず、今川家ゆかりの姫として生まれ育ちながら、今川家の嫡男ではなく人質の家康を選んだ瀬名がそうだし、信長の妹・市(北川景子)もそうだ。

 それは同じ古沢脚本で同じ戦国時代を描いた映画『レジェンド&バタフライ』にも通じている。信長(木村拓哉)の正室・濃姫(綾瀬はるか)は、信長をもねじ伏せる格闘能力を持ち、桶狭間の急襲作戦を提案するほど頭が回り、けっして男に媚びない。信長が周辺の大名との戦いできりきり舞いしている中、海の向こうに目を向け、外国に行ってみたいと言う。瀬名に通じる、大きなビジョンを持った女性になっていた。

 そんなふうに現代の価値観にアップデートしているのは、セレブリティの女性だけではない。『どうする家康』第14回では、市の侍女・阿月(あづき/伊東蒼)の父親らに虐げられてきた人生を描いた。これは市が小豆(あずき)を入れた袋に託して信長に夫の裏切りを告げたという逸話を大胆にアレンジした架空のエピソードだ。その前にも、本多正信(松山ケンイチ)の幼なじみで、心ならずも身を売ってきた女性が登場した。古沢は、男たちが戦いに明け暮れる中で懸命に生きた名もなき女性たちをも描こうとしている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる