久保史緒里、『どうする家康』が俳優としての大きな転換点に 難役・五徳の解釈光る

久保史緒里、『どうする家康』が転換点に

 もうすぐ物語の折り返しを迎えようとしている『どうする家康』(NHK総合)。大きなクライマックスとなるのは、かの有名な「本能寺の変」。その前には家康(松本潤)にとって悲しい出来事が待ち受けている。キーパーソンとなるのは、徳川家と織田家の間で揺れる五徳(久保史緒里)だ。

 五徳は、家康の嫡男・信康(細田佳央太)のもとに嫁いだ信長(岡田准一)の娘。久保史緒里が演じる現在の五徳が登場したのは、5月7日放送の第17回「三方ヶ原合戦」からだった。家康の妻・瀬名(有村架純)と長女・亀姫(當真あみ)とともに若殿・信康を支える立場にある五徳は、信長の妹・お市(北川景子)にも似て気が強い人物。家康の家臣・七之助(岡部大)も密かに好意(少なからず)を抱く、高貴かつ特異な立ち位置に彼女はいる。

久保史緒里

 特異というのは、家康配下の徳川勢にいながら、信長の娘であるということだ。戦に向かう信康を力強く鼓舞しながら、口喧嘩をすることもしばしば。亀姫を下に見て、弄ぶような場面もあるが、そのプライドの高さ、信長の娘という自負は瀬名にも「私は織田信長の娘じゃ! 無礼者!」という厳しい言葉となってあらわになる。ただ、そういった言動の一つひとつには、徳川家の人々に対して素直になれない裏腹な五徳の心情も見え隠れしている。

 しかし、父である信長をいざ前にすると目も合わせられない。第22回「設楽原の戦い」では、信長からある密命を受ける。それは徳川家の監視。「今後、我らにとって最も恐るべき相手は徳川じゃ。この家の連中をよ〜く見張れ。決して見逃すな」と信長から耳打ちをされる五徳の表情は恐怖で引きつっている。首根っこを捕まれ、ほっぺを鷲掴みにされる五徳もまた信長にとっての「白兎」に過ぎないのではないかと思えてくる、画的にも鮮烈なシーンだ。

 6月10日に浜松市で開かれた『どうする家康』のトークイベントに久保が登壇。静岡県内のニュース番組『NHKニュースたっぷり静岡』(NHK静岡放送局)のインタビュー内で、久保は五徳が抱える「孤独」が演じていて最も葛藤した部分だと答えている。徳川家と織田家の関係を深めるため、信康のもとに嫁いだ五徳だったが、信長の駒同然のスパイにさせられ、気づけば徳川にも織田にも彼女の居場所はなくなっていた。

 第23回「瀬名、覚醒」では、謀のために武田の使者・千代(古川琴音)と密会する瀬名を、五徳が信長に密告。瀬名も、五徳も、互いにその立場や動きを把握しながら、「我が父は裏切りは決して許しませんから。義母上、我らも気をつけなければなりませぬなあ。疑われることがないように」と五徳は瀬名に忠告する。額面通りに受け取れば、五徳が瀬名にプレッシャーをかけているように思えるが、これまでのような語気がこのシーンではそこまで感じられず、逆に五徳としては珍しい優しさが垣間見える演技のように思える。信長に逆らえばその先に何が待っているのかーー五徳は瀬名の身を案じているのだ。

久保史緒里

 先述したインタビューの中で、久保がプロデューサー陣と話してきたのは「五徳という人物は優しい人間だったと思う」という解釈だと明かしている。そのことは先のシーンだけでなく、文机の前で筆を取り一筋の涙を流す五徳の表情にも表れている。徳川家を思いながらも、「信長の犬」として文を送る自身を恥じながら。

 あらゆる面で揺れ動く、難しい立場の五徳を久保は好演。Twitterでは「五徳ちゃん」がトレンドに入り、久保が乃木坂46のメンバーであることを初めて知るというツイートも多く見受けられる。松本潤が自身のInstagramに、有村架純、當真あみ、久保、細田佳央太との「家族写真」をアップするなど、岡田准一を含めたキャスト陣との仲は良好で、中でも有村は乃木坂46のコンサートで久保の推しタオルを掲げるほどの間柄に。6月24日放送の『土スタ』(NHK総合)にはゲストとして有村と久保が登場し、「しおちゃん」「架純さん」と呼び合う仲だけでなく、ライブでお互いを見つけハートを送りあっていた微笑ましいエピソードが明かされた。

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