『らんまん』三山ひろしと松坂慶子の並びの説得力 演歌歌手は近現代朝ドラのスパイスに

『らんまん』義兵衛役・三山ひろしの説得力

 祖母・タキ(松坂慶子)から寿恵子(浜辺美波)との結婚を認められ、改めて植物の道を究めるよう背中を大きく押された万太郎(神木隆之介)。そんな『らんまん』(NHK総合)第13週では、寿恵子の花嫁準備のため呉服商・仙石屋の若旦那・浜村義兵衛(三山ひろし)が登場した。

 『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に8度の出場経験がある演歌歌手の三山は、本作が朝ドラというよりドラマ自体初出演となる。義兵衛からヤマザクラが病気だと聞いた万太郎が、なんとかそれを治そうと決心する。縁側にタキと並んで座っていても、その貫禄や風情に負けない義兵衛の姿にはやけに説得力がある。

 日頃から着慣れている着物姿はもちろんお似合いで、そして目上の人間と並んだ際にかわいらしい後輩感を醸し出しながらも、対等に話すところはあくまでフラットに、という塩梅が自然とできるのだろう。それは日頃彼が演歌業界に身を置いているからこそ、また自身も師弟関係を結び芸事を磨いてきた中で身についた所作に他ならないだろう。

 同じく、朝ドラに出演しインパクトを残した演歌歌手と言えば、『エール』(NHK総合)、『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)に出演した徳永ゆうきだろう。『エール』では、久志(山崎育三郎)と御手洗(古川雄大)が参加した新人歌手オーディションに個性豊かなライバル役として登場した。『カムカムエヴリバディ』では、3代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)の同級生で荒物屋の息子の赤螺吉之丞役を好演。父・吉右衛門(堀部圭亮)からの溺愛を受け甘やかされたガキ大将だった子どもの頃の面影を残しつつ、さらには幼少期よりも父親と口調や目配せがどんどん似てきてリンクする吉之丞を見事に体現した。ひねくれているし、とにかく身内贔屓だが、なんだかんだ憎めない吉之丞とひなたの憎まれ口の叩き合いは病みつきになった。

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 近現代を描く朝ドラでは、どこか懐かしい雰囲気がする演歌歌手は上手く調理され、作品のスパイスになることが多いように思える。彼らは時代を問わずに馴染むことができる。演歌歌手は慕情や身近な人への哀愁などの人間模様を曲に乗せ、全て日本語で歌い切る。歌謡の中で時に大袈裟なまでの感情表現を引き出すことが求められることもあるため、その佇まいから香り立つものがあるのかもしれない。ドラマ初出演となる『らんまん』で三山はどんなインパクトや余韻を残してくれるのか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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