『王様に捧ぐ薬指』が見せてくれた“夢のストーリー” 橋本環奈と山田涼介は“最強のふたり”に

『王様に捧ぐ薬指』は“夢”のストーリー

〈難攻不落 敵の前でも/真っ向から挑もう/だって僕ら最強のふたり〉

 Hey! Say! JUMPが歌う主題歌「DEAR MY LOVER」の歌詞にある通り、最強なふたりが最高のハッピーエンドを見せてくれた火曜ドラマ『王様に捧ぐ薬指』(TBS系)。最終回で描かれたのは、“ラスボス”とも言われた東郷(山田涼介)の母・静(松嶋菜々子)との真っ向勝負だ。

 静にとって、東郷は人生のすべてだった。それは、心から愛した恋人も、その人との間に生まれた新(北村匠海)も捨てて、家のために結婚をした静。待っていたのは、夫・智宏(利重剛)もまた家庭の外に愛する人がいる、“愛のない”結婚生活だった。そこにやってきた愛人の子・東郷。東郷を献身的に世話することで、自分の人生を肯定することができたのだろう。

 きっと本来、静は愛情深い人だったのだと思う。できることなら何もかもを捨てて、恋人とその子もために生きたかった。でも、彼らを守りたいと願ったからこそ、離れることを決意した。そんな行き場を失った愛情が強かった分、東郷への執着へと繋がったのではないだろうか。

 東郷が最初に綾華(橋本環奈)を連れてきたときに歓迎をしていたのは、東郷の愛情が綾華に向いていないことを知っていたから。結婚をしたとしても、母と子の関係が最も強くあってほしいと願った。しかし、東郷と綾華の愛情は徐々に育まれていく。新しい家族を作ろうとする東郷を見て、静は自分の存在価値が奪われるような感覚になってしまったのかもしれない。

 東郷の幸せを誰よりも祈りながらも、自分よりも大事な存在ができることは許せない。そんな歪んだ愛情が東郷との溝を生んでしまっていることにも、きっと静は気づいていたはず。でも、それをやめることができない。愛しているからこそうまく向き合えないという静の不器用さは、血が繋がっていないはずの東郷と似ている気がしてより切なかった。

 なぜなら東郷も、綾華を静の執念から守るために離れることを決意したからだ。綾華も何か事情があるとは思っていたものの、本心を聞くことができないまま過ぎた10カ月。東郷が新たな婚約者・美玲(早見あかり)と再婚する直前になって、神山(坂東龍汰)や父の金太郎(塚地武雅)から東郷が何を考えていたのかを知る。そして、今度は綾華が東郷を守ろうと立ち上がるのだった。

 「私、諦めない」。その強い想いが結婚には最も大事なのかもしれない。夫婦とは最小単位の家族。家族となれば、面倒なことも少なくない。でも、それを乗り越えていけると思えるからこそ、永遠の愛を誓い合うのだ。結婚式は、そんな自分にとって最強のパートナーとの門出を祝う場なのかもしれない。少なくとも「綾華との思い出があれば心を殺して生きていける」なんて悲しい眼差しで過去を見つめるものじゃない。

 綾華の「好き」というまっすぐで揺るがない言葉に、東郷も明るい笑顔を取り戻す。そして、いざ静のもとへ。「こっちに戻ってきて、東郷」「私をひとりにしないで!」そんな静の悲痛な訴えに、逃げることなく「あなたはひとりじゃない」とまっすぐに向き合った東郷。

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