岡田惠和脚本の真骨頂 『日曜の夜ぐらいは...』の面白さは“正論と正論の戦い”にあり

岡田惠和が描き続ける“正論と正論の戦い”

 一方、2人の描写とは真逆の衝撃を与えたのが、野田翔子と彼女の兄・敬一郎(時任勇気)のやりとりだ。遺産相続を放棄してくれと言う敬一郎に対して翔子は、相続の放棄は受け入れるから、家に戻って母に謝りたいと言う。翔子は好きな男の名前のタトゥーを彫ったことが原因で家族と絶縁していた。「驚いただろうと思うけど、そんな私、タトゥー入れただけで犯罪を犯したりしたわけではないし。時間も経ったわけだし、時代だって変わったしね」と自己弁護する翔子だったが、敬一郎は母親を守る義務があるので断ると言う。敬一郎は「お前がやったことが社会的にみてどういうことかは関係ない。興味もない」とつっぱねた後、翔子がタトゥーを彫ったのを見て母親の心が壊れたと言い「とりかえしのつかないことってのはなぁ、あるんだよ」と、悲しげな口調で怒りをぶつける。

 家族の被害者だったサチ、若葉とは逆に、翔子は母親の心を壊した加害者だということが、ここでは強調されている。楽しい会話劇の間にこういう苦い対話を挟み込むから、岡田惠和は信頼できる。

 『ユリイカ 2012年5月号特集=テレビドラマの脚本家たち』(青土社)で、岡田にインタビューした際に「正論と正論の戦いにしか興味がないんですよ」と語っていたのを、今も覚えている。

 翔子と兄のやりとりは、まさに正論と正論のぶつかり合いだったと言える。ここで言う正論は、どんな人間にも、善悪だけでは測ることのできない、その人なりの言い分があると言うことだ。終盤に入り、サチたち3人以外の人物の描写も増えてきた『日曜の夜ぐらいは...』だが、一見毒親に見える博嗣とまどかが抱える「彼らなりの正論」を、どのような形で岡田惠和が描くのかに注目である。

■放送情報
『日曜の夜ぐらいは...』
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜22:00〜放送
出演:清野菜名、岸井ゆきの、生見愛瑠、岡山天音、川村壱馬(THE RAMPAGE)、やついいちろう(エレキコミック)、今立進(エレキコミック)、椿鬼奴、飛永翼(ラバーガール)、橋本じゅん、和久井映見、宮本信子ほか
脚本:岡田惠和
演出:新城毅彦、朝比奈陽子、高橋由妃、中村圭良
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー    山崎宏太、山口正紘、郷田悠(FCC)、浅野澄美(FCC)
制作協力:FCC
制作著作:ABCテレビ
©︎ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/drama_22_abctv/
公式Twitter:@nichigura_abc
公式Instagram:@nichigura_abc

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