『それパク』は亜季の壮大な成長物語だ 芳根京子の演技で際立つ“お仕事ドラマ”の核

『それパク』は亜季の壮大な成長物語だ

 こうした、何事にも一生懸命な主人公の成長物語というのは、お仕事系ドラマのヒット作には欠かせない要素だ。例えば、芳根も出演していた綾野剛主演の日曜劇場『オールドルーキー』(TBS系)。サッカー選手を引退しマネージメントの仕事に転職、最初は何も分からず全てに戸惑う中で業界のルールを学んでいく。ある程度経験すると、今度は社員としての役目と、自分の仕事は誰に対して幸せにするものなのかという葛藤が生まれる。その中でも自身の思いに従い突き進み、周りの社員まで変えていくのは、まさに『それパク』のテーマと変わらない。

 主人公が突き進むといえば、黒木華主演の『重版出来!』(TBS系)もそうだ。主人公の黒沢心が大好きな漫画の出版業界に入り意欲満々で、常に前向きな姿勢なところは亜季のスタートと若干違うかもしれない。しかし心は柔道のオリンピック選手候補に選ばれていたものの、怪我で諦めざるを得なかった経験がある。だからこそ相手の気持ちが分かり、チームを大事にする。この体育会系の真っ直ぐなところは亜季と共通していると言えるだろう。また『重版出来!』は、いろんな先輩たちの姿を見て成長をしていくのだが、『それパク』においても、北脇だけでなく、又坂(ともさかりえ)や、亜季の元上司・高梨伊織(常盤貴子)といった、亜季を優しく見守るキャリアウーマンたちの仕事に対する姿勢が実は亜季を大きく成長させている。そうした周りの先輩たちの影響というのも現実世界ではごく自然なことで、お仕事系ドラマの面白さに繋がってくる。

芳根京子

 環境に慣れて成長していく様子を、流れに任せるように自然に見せているからこそ、好感度が高い主人公となっており、芳根の演技の巧さを改めて感じる。第9話は北脇がピンチに陥る内容となっているが、恩返しとは言わないまでも、今や意見を言う立場に成長した亜季がどう対処するのか。さらに今作の最大の見どころは、亜季が成長すればするほど北脇がかわいくなっていくところにある。支える側になった時の演技は芳根の得意としているだけに、亜季の活躍でどこまで北脇がかわいさを見せてくるのかにも注目したい。

参照

※1. https://www.ntv.co.jp/sorepaku/chart/
※2. https://realsound.jp/movie/2023/05/post-1338291.html

■放送情報
『それってパクリじゃないですか?』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:芳根京子、重岡大毅(ジャニーズWEST)、常盤貴子、渡辺大知、福地桃子、朝倉あき、豊田裕大、諏訪雅、高橋努、相島一之、赤井英和、野間口徹、ともさかりえ、田辺誠一
原作:奥乃桜子『それってパクリじゃないですか? 〜新米知的財産部員のお仕事〜』(集英社オレンジ文庫刊)
脚本:丑尾健太郎
演出:中島悟ほか
チーフプロデューサー:三上絵里子
プロデューサー:枝見洋子、森雅弘、岡宅真由美(アバンズゲート)
制作協力:AX-ON、アバンズゲート
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/sorepaku/
公式Twitter:@sorepaku_ntv
公式Instagram:@sorepaku_ntv
公式TikTok:@sorepaku_ntv

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