『それパク』は亜季の壮大な成長物語だ 芳根京子の演技で際立つ“お仕事ドラマ”の核

『それパク』は亜季の壮大な成長物語だ

 芳根京子主演ドラマ『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)は、知財の知識のない芳根演じる亜季が、知財のプロである重岡大毅演じる北脇にしごかれ、成長する姿を描く。物語も終盤に突入し、亜季が人間として成長してきたことが見えてきている。

 もともとの亜季のキャラは、公式サイトのプロフィールに「期待されると気合いが入るものの、自己評価は意外と低く、自分の意見を主張するのが苦手。その分、人の優しさや弱さに気づき、情に脆い」とあり、高校時代にソフトボール部に所属していたが万年補欠の代打要員であったことからも、劣等感が染み付いている“オドオド系”女子だった。(※1)はじめのころは知財の知識がないので、何か言われても言い返せずに言葉を飲み込んでいた。北脇の「ビジネスに正義はない」という考えには、人情派の亜季が納得のできない様子など、その心の葛藤を芳根は上手く表現した。

 変化が見えたのが、第4話。これまで幾度となく特許の問題で迷ってきた亜季だが、ツキヨンというキャラの特許出願を任される。北脇に出願を急かされたが、「ツキヨンはみんなのものということに価値がある。誰かが独占してはいけない。これが陣取り合戦だとわかってる。でも、そうじゃない陣取りもある。私は月夜野がみんなのものを奪い取るような会社にしたくない」と、最後まで強く抵抗し、特許出願を止めた。結果的に世間から叩かれず会社を救うことになるのだが、ここまで自分の思いを主張することはそれまでになかったことだ。

 第4話では、北脇が実は情熱的な人間だという過去を亜季が知ったことにも重なっており、北脇にも「弁理士としての資格、藤崎さんにもあるかもしれない」と認められる。この苦しみ抜いた先に自ら答えを出す様子が、ふわふわした亜季がしっかり地に足を着けたことの象徴のようだった。芳根といえば、優秀で真面目なキャラだったり、熱い人を演じることが多いが、ここに来ていつもの熱い演技を持ってくることで、一つ殻を破った亜季の成長を感じさせた。

芳根京子が語る、広がる役幅と挑戦の姿勢 「“あのときと同じ”というのは悔しい」

芳根京子の役幅はどんどん広がっている。ダークな雰囲気の役を深みをもたせて演じるのが巧みな俳優だが、風変わりなキャラクターや等身大…

 亜季はここから、物事をハッキリと言うキャラに変わっていく。亜季の変化について芳根は「亜季は他人のことを考えていないわけじゃないけど、特に回が進むにつれて自分の意見を言葉にし始めています。自分自身のことを信じてる感じが、亜季の魅力なのだと思います」と答えていたが、まさにそれが色濃く出たのが第6話だった。(※2)

芳根京子

 大学の研究室との共同制作の新ドリンクを学会で発表するつもりだったが、特許をまだ出願しておらず、月夜野側は学会での発表にストップをかける。学生たちは駄々をこねて「僕らのアイデアを金で買うのか」と月夜野の文句を言い始めるのに対し、亜季が立ち上がり「これはビジネスなんです。ビジネスに正義なんかありません!」と啖呵を切る。情に流される亜季ならば学生の意見を尊重しそうだが、これまで特許に関して様々な経験をしてきたことで現実の厳しさや、商品を作ることにはみんなの思いが込められていることなど、そうした思いが込み上げて言葉に出てしまった。つまりこれは、亜季がプロになっていった証拠であり、北脇の思いが伝わったとも言える。そして第8話になると、すっかり知財部に溶け込み新人の雰囲気は消え、巨大な敵と戦う一戦力として頼もしい姿になっていた。

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