『メダリスト』はアニメ化とも好相性? 応援せずにはいられない原作漫画の魅力を熱弁!

アニメ化決定『メダリスト』の魅力

「人生ふたつぶん懸けて、叶えたい夢がある」

 『アフタヌーン』(講談社刊)で連載中のフィギュアスケート漫画『メダリスト』。この物語は、アイスダンス選手として全日本選手権を経験しながらプロスケーターの夢を叶えられなかった青年・明浦路司と、フィギュアスケート選手になることを切望する小学生・結束いのりが出会うところから始まる。リンクへ強い執念を抱く2人がタッグを組み、2人分の人生を懸けて世界一という夢を叶えていく姿が、多くの人の心を揺さぶっている。

 2020年の5月に連載がスタートした同作は、2022年に「次にくるマンガ大賞2022」コミックス部門と「第68回小学館漫画賞」一般向け部門を受賞。さらに、漫画のキャラクターを讃える「漫画アワード、マガデミー賞2022」で主人公・結束いのりが主演女優賞に輝き、“3冠”を達成した。

 先日TVアニメ化されることが発表されると、Twitterで次々とリツイートされトレンド1位に。その日のうちに、アニメの『メダリスト』TVアニメ公式Twitterのフォロワーは1万人を超えた。フィギュアスケート界に彗星の如く現れた主人公・いのりと同様に、つるまいかだ氏のデビュー作は快進撃を続けている。

美しい世界の裏にある“代償”がテーマ

「愛知県が舞台のフィギュアスケートの漫画だ! 読んでみよう」

 東海エリアを拠点にアスリートの取材をすることが多い筆者は、そんな軽い気持ちで第1巻を手に取った。巻頭カラーの1ページ目をめくる。スケート靴を抱え、少し怯えるような眼差しの少女が目に飛び込んできた。ゆっくりと見開きの右ページに目を移すと、黒ベタに白文字でこう書かれている。

代償もわからず
飛び込んだ
夢見る小さな
わたしたちは
数えきれないものを
支払っていくんだ

 かわいらしく、キラキラとした絵の世界観とはかけ離れた言葉。背筋にゾクゾクっと冷たいものが走った。「そうか、この作品は代償の物語なのか」。

 アスリート、そして彼ら彼女らを支える人たちは、夢を叶えるために多大な「代償」を支払っている。スポーツノンフィクションではそうした「代償」が描かれることは珍しくないが、漫画でこれほど全面に打ち出されることは少ない。

 この作品に登場する選手たちは、小学生にして既に代償を支払う覚悟を持っている。スケートに興味がなくとも、何かに真剣に取り組んでいる(打ち込んだ経験のある)人ならば、熱いものが込み上げてくるだろう。

 『メダリスト』は一見美しく繊細な少女漫画のようでありながら、実に骨太なスポーツ漫画なのだ。

あらゆる世代の胸を打つ強い言葉

 引用した冒頭だけでも感じてもらえると思うが、『メダリスト』の言葉は、普遍的で、強い。この漫画は、画力の高さが評価されているが、筆者はそれ以上に言葉の力に魅力を感じる。

 例えば、第1巻で、司コーチがいのりに大会に向けて、2回転ジャンプを練習するか、1回転ジャンプで完成度を上げるか、どちらかを選択させる場面がある。

強くなればなるほど いろんな意見を持つ大人が あなたの前に現れる
その時に あなただけの行き先を 他人にいいように決められない選手になってほしい
あなたは大切な 人生を懸けて いるんだ
あなた自身が 自分の選択を 軽んじては いけないよ

 例を挙げればキリがないほど。小学生に向けられた言葉、小学生が放つ言葉は、大人である私たちの心にもグサグサと突き刺さってくる。

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