『合理的にあり得ない』天海祐希が体現する探偵の掟 『マイファミリー』と共通点も?

『合理的にあり得ない』天海祐希の探偵の掟

「人を見かけで判断しない。これ探偵の鉄則」

 不穏な世の中である。こんなご時世だから、いつ何どき、何が起きても不思議ではない。冤罪で逮捕されたり、家族が歩道橋から突き落とされることだってないとは言えない。誰もが探偵に依頼する可能性はあるし、場合によっては自ら探偵事務所を立ち上げることだってあるだろう。探偵について知っておくことは、決して無駄にならない。

 『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』(カンテレ・フジテレビ系)は、私たちに探偵業の厳しさと奥深さを教えてくれる作品だ。第7話で、涼子(天海祐希)と貴山(松下洸平)は誘拐事件を解決するため、動物病院のスタッフに扮してセレブ家庭に潜入した。

 探偵の掟その1、身バレ厳禁。調査対象者に感づかれてはならず、たとえ怪しまれても正体を知られてはならない。インテリアコーディネーターの石原歩美(酒井若菜)と経営コンサルタントの夫・啓士(山崎樹範)は絵に描いたような幸せな家族だったが、娘の星名(山本紗々萊)を誘拐されてしまう。犯人は室内に取り付けられた監視カメラと盗聴器で夫婦の動きを把握。見知らぬ涼子を警戒するがなぜかスルーし、歩美たちにホームパーティーを開催するよう命じた。

 探偵の掟その2、秘密は墓場まで持って行くこと。医師、弁護士、公務員、一般の会社員に至るまで機密情報の漏洩はご法度だ。なかでも探偵は、表に出てはいけない情報を扱っており、ひとたび流出すれば依頼人の命が危険にさらされる。守るべきは個人間の事情も同様である。なじみの刑事がいきなり訪ねてきても、誘拐事件が起きたと口外してはならない。第7話では、元捜査一課の丹波(丸山智己)の乱入によって涼子たちの計画が台無しになりかけたが、なんとか犯人とパーティーの参加者に気付かれずにやりすごすことができた。

 探偵の掟その3、報酬は仕事が終わってから。情報料を含む調査にかかる諸経費は全て自分持ちだ。ドラマに出てくる探偵はたいてい懐具合がカツカツだが、それは事件解決を優先しているためである(他にも理由はある)。買うとそこそこの値段がする変装用の衣装も、トラブルが丸く収まって初めて投資が回収される。なかには全額前払いや着手金をもらうケースもあるが、涼子に関していえば心配無用だ。なにせ悪者からせしめた金を、そっくりそのまま依頼人に返金するのだ。明朗会計じゃなければ、依頼者の信頼を得ることができないと熟知しているのである。たまに浪費する程度のぜいたくは、許してあげてほしい。

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