『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』北米No.1 中国を筆頭に海外でも大ヒット
日本に暮らしていると、5月はまだ「春」という感覚が強いが、ハリウッドはいよいよサマーシーズンに向けて加速するところ。5月19日~21日の北米週末興行収入ランキングは、人気カーアクション映画シリーズ最新作『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』が初登場でNo.1を獲得。文字通りの“ブースト”効果で市場に弾みをつけた(このタイトルは邦題だが)。
ヴィン・ディーゼル主演、おなじみ『ワイルド・スピード』もいよいよ10作目。最終章に突入する本作には、ミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソン、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、サン・カン、ジョン・シナ、ジェイソン・ステイサム、ヘレン・ミレン、シャーリーズ・セロンらが再集結。新たな悪役に『アクアマン』(2018年)のジェイソン・モモアを迎え、『マーベルズ』を控えるブリー・ラーソンも参戦した。監督は同じくシリーズ初参加のルイ・レテリエだ(第11作を手がけることも決定済み)。
人気シリーズ最新作×オールスターキャストという掛け算により、本作は3日間で6750万ドルを記録。前作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(2021年)の初動成績である7004万ドルには届かなかったものの、事前の予測通り、シリーズとしてはまずまずの滑り出しとなっている。
もっとも『ワイルド・スピード』は、北米以上に海外市場で熱い人気を得ているシリーズだ。本作も海外84市場で2億5140万ドルを稼ぎ出し、早くも世界興収3億1890万ドルというロケットスタート。海外オープニング成績では『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を抜き2023年第1位、世界オープニング成績では第2位の記録を打ち立てた。
とりわけ強力な基盤は巨大市場・中国で、昨今ハリウッド大作がヒットしにくい傾向にあるなか、3日間で7830万ドルという北米以上の初動成績を記録。そのほか、メキシコで1670万ドル、フランスで970万ドル、ブラジルで960万ドル、インドで860万ドルとなった。日本の初動成績も700万ドルで、これは日本における『ワイルド・スピード』シリーズの最高記録だという。
懸念となるのはコスト面で、本作は製作費3億4000万ドルというシリーズ屈指の高予算、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022年)に次いで歴代第8位の高額作品である。北米だけでもプラス1億ドルの広報・宣伝費がかかっているとみられ、これらを世界興収でどう回収するかがポイントだ。前作『ジェットブレイク』の7億2622万ドルを超えることはほぼ確実だが、10億ドルの大台突破が可能かどうか……。
なお『ワイルド・スピード』シリーズは批評家より観客の評価が高いのが通例で、Rotten Tomatoesは批評家スコア54%、観客スコア86%となった。出口調査に基づくCinemaScoreは「B+」評価で前作と同じ。また別の調査では観客の82%が肯定的で、67%が「薦める」と回答している。こうした観客の満足度が口コミやリピーターに繋がれば、コスト面の課題もクリアに近づくこととなる。
そのほか今週はトップ10に大きな変化はなく、3週目で首位陥落となった第2位『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は3日間で3198万ドルを記録。米国興収は2億6652万ドル、世界興収は6億5912万ドルで、7億ドル突破が見えてきた。第5位の『死霊のはらわた』最新作『Evil Dead Rise(原題)』は、日本では『死霊のはらわた ライジング』として8月2日にソフト&配信でリリースが決定。北米では公開5週目にしてトップ5圏内にとどまる健闘ぶりだ。