佐野亜裕美×渡辺あやが作品にかけた思い メディアが抱えるジレンマを描いた『エルピス』

『エルピス』メディアの深刻なジレンマを描く

 黙示録的な『エルピス』はテレビを知り尽くした人々によって作られた。プロデューサーは、『カルテット』(TBS系)や『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)の佐野亜裕美。脚本は、連続テレビ小説『カーネーション』(NHK総合)や『ワンダーウォール』(NHK総合)を手がけた渡辺あや。冤罪事件に関心を寄せる佐野が渡辺と練り上げた企画は、放送からさかのぼること6年前に構想されたが、諸事情により一度はお蔵入りとなった。紆余曲折を経て実現に至った経緯や作品に込めた思いは、Blu-ray&DVDに収録された佐野と渡辺のインタビューで知ることができる。

 大根仁監督の演出はドラマの骨太な魅力を引き出し、海外で上映された映像クオリティの高さは全編を通して一貫している。撮影本番の様子を別カメラから収めたメイキング映像は、ファンならずとも注目の内容だろう。話題のシーンの裏側や貴重な制作過程を追体験することで、より深く『エルピス』を堪能できる。俳優の肉声に触れるインタビューでは、長澤、眞栄田、鈴木の鼎談に加えて、長澤の単独インタビューも収録されており、長澤が語る「撮影現場での希望と災い」や『エルピス』との運命的な出会いは必見だ。

 そして放送当時、特に話題になったのが主題歌の「Mirage」だった。音楽集団「Mirage Collective」の楽曲は、『大豆田とわ子と三人の元夫』の主題歌「Presence」を手がけたトラックメイカー/音楽プロデューサーのSTUTSがプロデュース。Mirage CollectiveのフロントマンはYONCE(Suchmos)で、毎回変わるエンドロールに合わせて、長澤や眞栄田を含む多彩なゲストがフィーチャリングされた。徐々に彩りを増すアレンジを、この機会に聴き比べるのもいいかもしれない。

 時代を見据えてアートとして誠実に作られた本作は、観る者を確実に変える力を持っている。その意味で永久保存版のBlu-ray&DVDはまさしくパンドラの箱だ。希望、災厄、あるいは……。最後まで観終えたとき、あなたはそこに何を見出すだろうか?

■リリース情報
『エルピスー希望、あるいは災いー』
5月26日(金)発売 ※レンタル同日リリース(全5巻)

<Blu-ray BOX>
価格:26,400円(税込)

<DVD-BOX>
価格:20,900円(税込)

【封入特典】
・スペシャルブックレット(24P)

【映像特典】
・メイキング
・長澤まさみスペシャルインタビュー
・長澤まさみ×鈴木亮平×眞栄田郷敦 3ショットインタビュー
・渡辺あや×佐野亜裕美 インタビュー
・エルピス in カンヌ
・八頭尾山連続殺人事件 特集映像
・スピンオフドラマ「8人はテレビを見ない」

※収録内容、商品の仕様等は予告なく変更となる場合あり

出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平
脚本:渡辺あや
演出:大根仁、下田彦太、二宮孝平、北野隆
音楽:大友良英
主題歌:Mirage Collective「Mirage」(SPACE SHOWER MUSIC)
プロデュース:佐野亜裕美、稲垣護、大塚健二
発売元:関西テレビ放送株式会社
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©カンテレ

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