『だが、情熱はある』髙橋海人×戸塚純貴によるオードリーの空気感 森本慎太郎の“役者魂”も
「好きなことできるのは、学生のうちだけなんだから」
『だが、情熱はある』(日本テレビ系)第3話で、若林(髙橋海人)の母・知枝(池津祥子)が放った言葉を、私も何度か言われた経験がある。大きな夢を追いかけられるのは、大学4年生(もしくは高校3年生)で就職活動が始まるまで。そこからは、現実と向き合えない人間は、まるで脱落者かのような扱いを受ける。
社会に出て働き、お金を稼ぐのは苦しいこと。そんな価値観を植え付けられていると、「楽しく働く=悪」のように思えてきてしまう。若林のように、親から「社会から逃げんなよ」と言われた瞬間、プツンと糸が切れてしまった人もいるのではないだろうか。
でも、若林は逃げなかった。どれだけ不安でも、親にバカにされても、“芸人になる”という夢を追い続けた。それができたのは、きっとそばに春日(戸塚純貴)という心強い味方がいてくれたから。彼の存在があったからこそ信念を貫くことができたのだろう。
第3話で改めて気付いたのだが、若林と春日のバランスは本当に絶妙だ。たとえば、バイトの面接に持っていく履歴書を、若林は何度も何度も確認するのに、春日は「そんなに気を遣わなくてもね、受かるよ」とのほほんとしていたり。若林が家族から追い詰められている状況にいても、わりと平静を保っている。
実際のオードリーのコンビ愛にも、目を見張るものがある。なかでも、いまだに印象に残っているのが、2009年に放送された『お笑い芸人どっきり王座決定戦スペシャル』(フジテレビ系)で、若林が春日に300万円を貸してもらうドッキリを仕掛けた時のこと。正直なところ、“ドケチ芸人”と呼ばれ、ジュースも飴玉を水につけて自作するほどの春日が、そんな大金をあっさり出すわけがないと思っていた。
だが、春日は意外にも「いける」と言い、本当に300万円を持って現場に現れたのだ。この番組を観ていた多くの人も、「あの春日が!?」と驚いたはず。だけど、『だが、情熱はある』を通してオードリーのコンビ愛に触れていくうちに、「確かに、若林になら貸すだろうな」と思うようになった。あまりベタベタしている関係性ではない2人だが、真の部分ではしっかりつながっている。
高校からずっと一緒の若林と春日には、“家族”と同じ、いやそれ以上の深い絆が宿っているのだろう。演じている髙橋と戸塚も、オードリーが育ててきた長年の空気感を体現しているのだからすごい。