『ラストマン』福山雅治×大泉洋の可能性 ノーマライゼーションの視点で時代の病根と対する

『ラストマン』福山雅治×大泉洋が示す可能性

 福山と大泉の共演は大河ドラマ『龍馬伝』(NHK総合)以来13年ぶり。伝統枠の日曜劇場では、福山が『集団左遷!!』(TBS系)、大泉が『ノーサイド·ゲーム』(TBS系)で主演のバトンをつないだ。単体でも個性がにじみ出る役者、誤解を恐れずに言えばクセの強い俳優として真逆のテイストを持つように思える福山と大泉は、ともに演技に対してストレートな情熱を抱いている。

 そんな2人が演じるバディは初回から相性バッチリだった。静と動、正面突破と迂回策、厳格さと寛容さ。皆実と心太朗は補い合うことで互いの能力を発揮する。皆実の良いところは、利用し利用されることを否定しないところだ。1人では何もできないと知っている皆実は、頼るところでは思いきり心太朗に頼る。心太朗も皆実を決して快く思っていないが、任務は確実に遂行する。すべてが一致しなくても、命を預ける相手に100%の信頼を寄せる。そこにあるのはフェアな大人同士の関係で、本来のバディはこういうものだと思わせた。

 「社会のために自分の力を使いたい」と話す皆実が、爆弾魔の渋谷(宮沢氷魚)に向けて発する言葉は自分自身に語りかけるようだった。現実を変えられないなら、いっそのこと転覆しようと企てる無敵の人と、共感を寄せる人々のゆるいつながり。昨今増加する暴力の病根に『ラストマン』はノーマライゼーションの視点から向き合い、治癒の可能性を示した。皆実の来日には隠された目的があるようで、心太朗の過去にも関係がありそうだ。因習と人間関係でがんじがらめの心太朗を、不自由に見えて自由な皆実はどう変えていくのか。バディの進化に注目したい。

■放送情報
日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:福山雅治、大泉洋、永瀬廉(King & Prince)、今田美桜、松尾諭、今井朋彦、奥智哉、王林、寺尾聰、吉田羊、上川隆也
脚本:黒岩勉
演出:土井裕泰、平野俊一、石井康晴、伊東祥宏
撮影監督:山本英夫
プロデュース:益田千愛、元井桃
編成プロデュース:東仲恵吾
音楽:木村秀彬、mouse on the keys
全盲所作指導:ダイアログ・イン・ザ・ダーク
協力:日本視覚障害者団体連合
製作:TBS
©︎TBS
公式Twitter:@LASTMAN_tbs
公式Instagram:LASTMAN_tbs

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