笠松将、“朝の顔”の一人として『らんまん』でさらなる飛躍へ 視線と表情の揺れに注目

笠松将、『らんまん』でさらなる飛躍へ

 前者で演じている後藤恵介も、後者で演じている佐藤彰朗も、どうにも“食えないやつ”である。凄んでみせたかと思えばふっと少年のような表情になり、怒声を発したかと思えばかつての旧友のような声色で画面のこちら側にいる私たちにまで語りかけてくる。『君と世界が終わる日に』シリーズ(日本テレビ×Hulu)やゲスト出演した『岸辺露伴は動かない』(NHK総合)では大きな肉体を軽々と操る身体能力の高さにも目がいくが、それは彼が純粋に努力をして身体を鍛えただけでなく、カメラのポジションやアングルまで意識したうえで演技を展開したからだろう。ハードでフィジカルな演技がたびたび取り沙汰されるが、彼の俳優としての力量はほんの一言のセリフの語調や、ふとした瞬間の視線と表情の揺れにこそあると私は思っている。


 お茶の間での笠松の存在に驚いた方は、すぐに彼の出演した映画もチェックしてほしい。オーディションを勝ち抜き初主演を務め、実在するラッパーに扮した『花と雨』(2020年)。あるひと夏の奇跡を描いた『ドンテンタウン』(2020年)。笠松演じる主人公とともに時空間を超越した旅をする『リング・ワンダリング』(2022年)。いずれも傑作である。そんな彼のキャリアの中で触れておきたいのが、今回の『らんまん』でも共演する佐久間由衣主演の『君は永遠にそいつらより若い』(2021年)だ。これから観ようという方のためにも、同作での笠松の役どころに深く言及するのはやめておこう。ただ言えるのは、彼が演じる青年はほんの数シーンしか登場しないこと。しかしこの役は同作において非常に重要な意味を背負った存在でもある。彼が発する優しい声色や控えめな笑顔を、私は忘れることができない。それはいつもと同じようでいて、何かしらのサインをそっと発していたような気がしてならない。

笠松将は痕跡を残し続けることができる俳優だ 力量を知ることができるオススメ映画3選

またも大きな飛躍を果たした2021年の笠松将。年始から『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)が放送され、等々力比呂役の好演で彼…

 朝ドラは視聴者層の幅が広いため、多くの人々にまんべんなく伝わるような演技が求められるものだと私は思っている。そのような場で俳優・笠松将はどのようなアプローチで幸吉というキャラクターを表現していくのだろうか。間違いなくこれが彼の次なるステップになるはずである。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる