『ハッピーフライト』は最も理想的な群像劇 徹底的なリサーチを基に描かれた空港の人々

『ハッピーフライト』は最も理想的な群像劇

 さらには空港に入り浸る航空機マニアの青年たちや、空港近くでカメラを構える飛行機愛好家。事故につながりかねないバードストライクを阻止するために空港に常駐するバードパトロールといった、ふつうの映画ではフォーカスが当たらない人々もこの群像に加わり、もちろん飛行機に乗り合わせる乗客たちもこの上なくユーモラスに描写される。

 とりわけ空港中を走り回るグランドスタッフコンビの愛嬌も魅力的(矢口作品におなじみの“伊丹弥生”も彼女たちのシーンのなかで登場するので見逃せない)だが、一機の旅客機に関わる人々の安全に対する妥協を許さない姿勢がリアルでありながらドラマティックに描かれているのは見ものである。緊急事態に直面した時に、パイロットはどのように判断を下し、コントロールセンターはどう動くのか。乗客の対応をするCAたちの毅然とした対応。なぜ旅客機が“世界一安全な乗り物”と言われているのか、この映画を見れば一目瞭然だ。

 そしてなんといっても映画の見せ場となるのはクライマックスの着陸に向けた15分間。ほぼリアルタイムで進行する見事な臨場感を演出することで、単なる職業解説ドラマではないことを証明する“映画らしさ”がこれでもかとあふれ出る。あまりの緊張感に三半規管が弱い人は注意が必要かもしれないが、いつのまにか自分も乗客の一人になったような気分が味わえることは請け合いだ。

 もちろんタイトルが『ハッピーフライト』というぐらいなのだから、当然のようにハッピーエンドが待っているので、そこは安心して観ていられる。ラストの清々しさ。きっと観終わったら、ふらりと空港に足を運んで行き交う人々を眺めたくなったり、どこでもいいから旅客機に乗って旅がしたくなるはずだ。

■放送情報
『ハッピーフライト』
フジテレビ系にて、3月25日(土)21:30~23:40 放送
出演:田辺誠一、時任三郎、綾瀬はるか、吹石一恵、田畑智子、寺島しのぶ、岸部一徳ほか
監督・脚本:矢口史靖
音楽:ミッキー吉野
©2008 フジテレビジョン/アルタミラピクチャーズ/東宝/電通

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる