長谷川博己と綾瀬はるかが“恋愛ではない”関係に 『はい、泳げません』が描く心の変化

長谷川&綾瀬が愛おしい『はい、泳げません』

 6月10日より映画『はい、泳げません』が公開されている。本作は興行収入が38億円を突破した大ヒット作『花束みたいな恋をした』(2021年)の製作プロダクション・リトルモアによる最新作だ。

 目玉となるのは長谷川博己と綾瀬はるかの映画初共演、そして、この2人のファンにとっての桃源郷が広がっていることだろう。事前に知っておく情報はそれだけでもいいくらいだが、さらなる魅力を記していこう。

長谷川博己と綾瀬はるかの“恋愛ではない”関係の尊さ

 あらすじを簡潔に記そう。大学で哲学を教える小鳥遊雄司はある事情により泳げなかったが、プールの受付で出会った水泳コーチの薄原静香に、半ば強引に水泳教室の入会を勧められ、主婦たちと共に水泳を習う悪戦苦闘の日々が始まる。

 前面に押し出されているのは、“泳げない”ことから始まるコメディだ。しかも、決してコンプレックスをあざ笑うようなものではなく、主人公の大学教員らしい長々と理屈を語る様のおかしみ(それに対しての真っ当なツッコミ)にクスリとしつつも、人によっては簡単にも見える水泳をひたすらに頑張る“本気”ぶりを心から応援できるようにもなっている。それは、元来“生真面目”な役が似合う長谷川博己が、全身全霊で泳げない男を体現していているおかげでもあるだろう。

 そんな彼に泳ぎ方を親身に教えてくれるのが綾瀬はるか。その丁寧な教え方、時には良くない行為にズバッと物言いする気持ちよさ、さらには“変人”ぶりも伺わせる綾瀬はるかは何とも愛おしく、誰もが「綾瀬はるかが水泳コーチだったら週7で通うわ」と思うのではないだろうか。

 なお、長谷川博己は実際は水泳が得意でスイスイと泳げるそうで、逆に泳ぎが下手なさまを演じるのに苦労したとのこと。一方、綾瀬はるかは運動神経抜群と知られるものの、水泳はそれほど得意ではなかったという。そんなことを微塵も感じさせないほど、良い意味で極端でもある“理屈っぽい泳げない男”と“理想的な水泳コーチ”を見事に体現した両者を、誰もが讃えたくなるのではないか。

 また、「長谷川博己と綾瀬はるかのかわいらしさをひたすらに愛でられる」という強大すぎる魅力がある上に、彼らの関係が“恋愛ではない”ことも大好きだ。後述もするが、2人はそれぞれ心の傷を抱えており、恋愛関係にならなくても、詳細に過去を語らなくても、お互いに信頼関係が生まれ、交友を育む過程でそれぞれが前向きになっていくさまも描かれている。劇中の物語は、男女の関係が恋愛に発展しなくても、お互いに良い影響を与え合うことができるのではないか、という現実への希望にも転換できるだろう。

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