『Get Ready!』妻夫木聡が見せたアナザーサイド 二項対立を脱却し日曜劇場の転換点に

不可能と思われる手術を成功させ、高額の治療費を要求する闇医者は法を逸脱した存在だ。警察に追われる彼らを生かしたのもまた、法という社会のルールを超えた場所で働く力だった。トランプで全てをひっくり返す最強のカードのように、ジョーカーは自らを切り札にして取引を持ちかける。そこには、仮面ドクターズの存在意義を守る意味もあった。正義に関する問答は、命を救うという一点で響き合っていた。闇医者にしか救えないものは、消え入りそうな命そのものだった。
「生き延びる価値」を問いかける『Get Ready!』は、同時期に高齢者世代を否定するかのような言説が取り沙汰されたことも影響してか、命の尊さという普遍的なモチーフに回帰した。結果的にそれは、本作が着想を得たであろう作品群に流れる骨太なメッセージを引き出した。また、近年の主流だった正義と悪の二項対立から脱却することで、日曜劇場の転換点となった。
妻夫木聡にとっては、笑顔を封印した自身のアナザーサイドを披露する機会となり、同枠の主演作である『オレンジデイズ』(TBS系)、『危険なビーナス』(TBS系)のイメージを塗り替えた。先ごろ行われた第46回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞したが、今作でもエモーショナルな表現力を保持しつつ、複雑に重なり合う感情のレイヤーを丁寧に紡いでみせた。
藤原竜也、松下奈緒も従来のテイストと異なる役柄で見せ場を作り、フレッシュな日向亘、當真あみは作品の中で自らが生きる場所を見出した。ゲスト俳優の熱演も特筆される。視聴者に伝わりきらなかったことは残念だったが、『Get Ready!』には見るべき内容が多くあり、時を経るにつれてひそかな名作として再評価されると確信している。
■配信情報
日曜劇場『Get Ready!』
TVer、Paraviにて配信中
出演:妻夫木聡、松下奈緒、日向亘、一ノ瀬颯、三石琴乃、橋本マナミ、當真あみ、結城モエ、中山麻聖、田野倉雄太、長見玲亜、矢島健一、片山友希、菅原卓磨、吉田涼哉、川本光貴、伊武雅刀、鹿賀丈史、藤原竜也
演出:堤幸彦、武藤淳、山本剛義
脚本:飯野陽子、山田能龍、川邊優子、金沢知樹、渡辺啓
プロデュース: 武藤淳、植田博樹、鈴木佳那子、市山竜次、佐井大紀
音楽:ノグチリョウ
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/getready_tbs/
























