『100万回 言えばよかった』英介が直木の命を奪った真相 未解決の謎は全て解かれるのか

『100万回 言えばよかった』英介の真相

 思い残すことのない別れなんて、きっとないんだと思う。「愛してる」とか「ありがとう」とか「会えて幸せだった」とか……どんなに言葉を並べてもこの気持ちを伝えるには全然足りないから。だから、ただ「わかってる」と言うしかなかったのかもしれない。

 金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系)第9話は、まさにクライマックス。直木(佐藤健)が巻き込まれた事件の真相、そして悠依(井上真央)を守るという思い残しが果たされたことで、成仏=この世界から魂が消えて譲(松山ケンイチ)の目にも見えなくなる状態になる姿が描かれた。

 なぜ、英介(荒川良々)が直木の命を奪わなければならなかったのか。その動機は、20年前から続く因縁によるものだった。莉桜(香里奈)や涼香(近藤千尋)らに“仕事”をさせる千代(神野三鈴)を手伝っていた英介。千代は「優しかった」と英介は言う。もちろん、その優しさは英介を懐柔するためのものだと、きっと英介もわかっていた。けれど、それでも千代の優しさを手放したくない一心で指示された通りに動かずにはいられなかった。

 きっと、千代の元に集まった少女たちも、そして「息子」と言われていた希也(永島敬三)も同じだったのだろう。愛されたくて、誰かに必要とされたくて、必死にもがいていた結果、あの屋敷に帰らずにはいられなかった。それほど愛情に飢えた日々を過ごしてきた、彼ら彼女らの生い立ちを想像して辛くなった。そんな偽りの優しさという毒にまみれた生活も、顧客とのトラブルがあったという千代の都合で一方的に解散となったという。そのとき関係者全員に配られた口止め料、それが直木から莉桜に届けられようとしていた500万円の正体だった。

 きっと直木が莉桜に会えば、英介の過去も知られてしまうだろう。やっとのことで千代の毒手から離れられ、多くの子どもを救いたいと思っていたのに。もし知られたらもう今までのようにはいかない……そう恐れた英介が口封じのために直木を殺めたのだった。

 その回想シーンの切なさといったらなかった。英介はいい人になりたかったと涙を浮かべる。自らが踏み込まなければならなかった“あっち側”に行ってもおかしくない子どもたちはまだまだたくさんいる。そのためには、ここで罪を認めるわけにはいかない。自分が捕まっては救われるはずの子どもたちが救われなくなってしまうのだ、と。英介なりの正義がそこにはあった。

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