『100万回 言えばよかった』莉桜が握る真実とは? 香里奈が演じ分ける一人の女性の二面性

『100万回』香里奈演じる莉桜が握る真実

 時折、映し出される捜査会議や葬儀場で、そういえば事の発端は殺人事件で、直木(佐藤健)は死んでしまったということを思い出す。それくらい、いつも悠依(井上真央)と直木、そして譲(松山ケンイチ)のやりとりがあたたかい『100万回 言えばよかった』(TBS系)。だが、莉桜(香里奈)が登場する時だけは空気が変わる。第5話で莉桜が悠依の職場に突然現れ、キッと悠依を睨みながら、首に手をかけた時は、「このまま悠依が殺される展開もあるのではないか?」と考えてしまったほど雰囲気が殺気立っていた。

 莉桜は悠依や直木と同じ里親のところに預けられ、一時期、共に生活をしていた人物。小学校時代から騒動を起こす問題児で、傷害罪の前科がある莉桜だが、特段、気性が荒い性格というわけでも、里親の元で悠依たちと不仲だったわけでもない。直木が事件に巻き込まれる直前に会う約束をしており、被害者の涼香(近藤千尋)とも友人だったことから、事件に関して何か知っていることがあるのではないかと目されている。少しずつ過去のことを思い出し、事件の真相に近づきつつある悠依を襲ってきたことから考えても、何か隠しておきたいことがあるのは明白だ。

 この得体の知れない莉桜の怖さに、『真犯人フラグ』 (2021年/日本テレビ系)で同じく香里奈が演じた“バタコ”こと木幡由実のことを思い出した人もいるのではないだろうか。バタコは最初、凌介(西島秀俊)が務める亀田運輸にクレームの電話をかけ続ける“クレーマー”だった。だが、次第に凌介を殺そうとしたり、凌介の息子を誘拐しようとしたりと行動が犯罪にまでエスカレート。実は、自分の息子を交通事故で亡くしたショックから立ち直れずに起こしてしまったことなのだが、最終的には、亡くなった息子の遺体を自宅の押し入れの中の冷凍庫に保存していたことも明らかに。予想外の展開に視聴者を騒然とさせたのだった。莉桜はそこまでの奇行はしていないが、何を思っているのか分からない様子がバタコを連想させるのかも知れない。

 莉桜には、石岡美也子という別の名前もある。美也子はホステスをしていたときに石岡清治郎(長谷川初範)という男に見初められ、内縁の妻となった。美也子は石岡に「財産はいらないから自由にさせてほしい」という願いを聞き入れてもらい、好きに暮らしているようだ。悠依を襲った時の莉桜は黒づくめの出立ちだったが、美也子は真っ白なワンピースで、電話を買ってくれた石岡に少し甘えるようにお礼をしていた。洋服の色の視覚的効果もあるだろうが、莉桜と美也子は別人のようだ。香里奈は一人の女性の二面性をうまく演じ分けている。

 莉桜は、事件の前、直木のスマホに「待っています。何かありましたか」とショートメッセージを送っていることから、ふたりは約束をしたが会えず、直木も莉桜ではない誰かに殺されたことが推測できる。それでも莉桜の怪しさは満点だ。悠依は、最近襲われた時も中学生の時に遊園地から一人で帰された時も、莉桜から「こっち来ないで」と言われたという。譲は、悠依がよくない何かに巻き込まれないために莉桜がそう言ってくれたのだと言うが、この言葉は何を意味しているのだろう。謎の多い莉桜のことをどんどん知りたくなっている。

■放送情報
金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:井上真央、佐藤健、シム・ウンギョン、板倉俊之(インパルス)、少路勇介、穂志もえか、近藤千尋、桜一花、香里奈、平岩紙、春風亭昇太、神野三鈴、菊地凛子、荒川良々、松山ケンイチ
脚本:安達奈緒子
プロデューサー:磯山晶、杉田彩佳
演出:金子文紀、山室大輔、古林淳太郎
編成:中西真央、吉藤芽衣
主題歌:マカロニえんぴつ「リンジュー・ラヴ」(TOY’S FACTORY)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/100ie_tbs/
公式Twitter:@hyakumankai_tbs
公式Instagram:hyakumankai_tbs

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