『6秒間の軌跡』高橋一生の演技に圧倒された30分間の“奇跡” 父と母の過去が明らかに

『6秒間の軌跡』高橋一生が見せた“奇跡”

 理代子と再会した当時、航は知り合いから別の女性を紹介され、何度か逢瀬を重ねていたという。一方、理代子は新しい夫との生活を送っており、2人はそれぞれの人生を歩みだしていた。でも彼らは再び出会い、また恋に落ちた。そのことを航は「出会い直してしまった」という言葉で星太郎に聞かせる。

 いくら元夫婦といえども、やっていることはただの不倫。にもかかわらず、自分たちの行いをあたかも美しいもののように彩るその言葉に星太郎が見せた表情に胸が苦しくなった。本当は理代子についていきたかったけど、母親に甘えていると思われたくなくて航と暮らしていくことを選んだ星太郎。そのことで自分は理代子を捨てた、航のことも騙してるという二重の罪悪感を背負った星太郎は母親がいない寂しさや、いつか大事な人がまた自分の目の前からいなくなってしまうのではないかという恐怖を誰かに打ち明けることができなくなった。

 星太郎が空想上の航を生み出したのは、そんな小さい頃の自分を迎えにいくためでもあったのだろう。そして、止まったままの時間を進めるために少なくとも30年はかかった。なのに、両親は自分のいないところで勝手に2人だけの時間を刻んでいたのだ。投げやりに「いいんじゃない? 2人で勝手にやってれば。そこに俺は存在してないし」と言う星太郎の表情には憤りや悲しみ、呆れ、諦めなどいろんな感情が入り混じる。

 好きな人のために花火を上げたり、それを見て結婚を強く決心したり、息子に花火の火薬である星にかけて星太郎と名付けたり、航と理代子は元来ロマンチックな性格なのだろう。だが、そういう自分たちに陶酔するあまりに周りが見えなくなる。そんな両親に対して呆れながらも、「もうどっか行っちまえ」と航に告げる星太郎は言いたくないことを言う時の顔をしていた。複雑に入り組んだ星太郎の感情が痛いほどに伝わってくる高橋一生の演技に圧倒される30分間の“奇跡”を見た。

 そして、星太郎は理代子に対する復讐を決意。このファンタジー・ホームコメディはどこに向かっていくのか。理代子の喫茶店に通うひかりは本当にただ花火に興味を持ったから星太郎のもとに現れたのか。まだまだ回収されていない謎を連れ、本作は最終章に突入する。

■放送情報
土曜ナイトドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30〜0:00放送
出演:高橋一生、橋爪功、本田翼
脚本:橋部敦子
監督:藤田明二(テレビ朝日)、竹園元(テレビ朝日)、松尾崇(KADOKAWA)
ゼネラルプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、山形亮介(KADOKAWA)、新井宏美(KADOKAWA)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:KADOKAWA
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/6byoukannokiseki/
公式Twitter:@6secEx

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