『6秒間の軌跡』高橋一生の演技に圧倒された30分間の“奇跡” 父と母の過去が明らかに

『6秒間の軌跡』高橋一生が見せた“奇跡”

 苦虫を噛み潰したような表情とともに絞り出された星太郎(高橋一生)のある言葉が、物語の空気感を一変させた。『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』(テレビ朝日系)第8話では、星太郎の知らなかった両親の過去が明らかとなる。

 星太郎には父・航(橋爪功)が生きている間に聞けなかったけど本当は聞きたかったこと、話せなかったけど本当は話したかったことがたくさんあった。人の死というものは往々にして突然で、多くの場合いろんな後悔が残る。だけど、星太郎は航が幽霊になって現れてくれたおかげで、その後悔を一つひとつ晴らすことができた。それが「大事なことは先送りにしない方がいい」という教訓にもなり、一歩前に踏み出すきっかけにもなったのだ。

 だけど、“幽霊”だと思っていた航は自分が作り出した都合のいい“幻想”に過ぎなかった。霊感を持つひかり(本田翼)にも見える正真正銘の幽霊である航が現れたことで、その事実に気がついた星太郎。それだけでもショックなのに、幽霊の航からさらに衝撃の事実を告げられる。なんと、両親は離婚後、自分の知らないところで愛人関係になっていたのだ。

 心温まるファンタジーかと思いきや、ヒリヒリする展開が待ち構えている。これぞ橋部敦子のドラマである。だけど、シリアスにはなり過ぎない。今回も怒りに任された星太郎が頭をぶつけるシーンからスタートし、序盤はいつものようにコントのような星太郎と航のやりとりが繰り広げられた。

 星太郎に促され、別れた妻・理代子(原田美枝子)との出会いから別れ、そして再会までの歴史を語り始める航。出会いは航が花火師として参加した大会だった。航はスポンサーの娘である理代子と恋に落ちたが、相手方の親戚に大反対を受けたという。

 その反対を押し切ってまで理代子が航と結婚したいと思うほどに惚れ込んだ理由。それは航が理代子のためだけに渾身の花火を上げたからだった。個人向け花火の商売を始めるにあたり、航が考えた「あなたのためだけの花火を打ち上げます」というキャッチコピーの原点がそこにある。夜空を翔けめぐる想いを乗せた花火が、見る人の心を打つことが航には分かっていたのだ。

 だが、2人の関係は星太郎が小学校に進学した頃、航が理代子に「何か習い事でも始めたら」と提案したことで変化する。陶芸を始めてから、家に作品が増える度にどんどん綺麗になっていった理代子に航は突然別れを切り出された。理由を聞いても、理代子は「こっちの世界とあっちの世界を行き来してたけど、なんだかこっちに戻れなくなっちゃったみたいなの」と曖昧な返答をするばかり。航に理代子を引き止める術はなく、ただ受け入れるしかなかった。

 その5年後、たまたま入った喫茶店でママである理代子と航は再会した。その時のことを「旦那が作った洒落たコーヒーカップに囲まれて……」と振り返る航の言葉から察するに、理代子は陶芸教室の講師を務める陶芸家と恋に落ち、航との離婚後に再婚したのだろう。自分に力が足りなかった、俺と一緒になったのは間違いだった。そんな風に悔いる航に、星太郎は何か言いたげだが、上手く言葉が出てこない。ようやく、その言葉が出てきたのは航が再会後の自分と理代子の関係をまるで恋愛小説のように語った時のことだ。

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