『6秒間の軌跡』橋爪功の演じ分けで成立していた“2人”のオヤジ 切なすぎる星太郎の過去

『6秒間の軌跡』橋爪功の巧みな演じ分け

 真実は、ちょっと切ない。事前にそう予告されていた『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』(テレビ朝日系)第7話だが、ちょっとどころの騒ぎではない。その真実を知った時、きっと誰もがこの物語を最初から見返したくなる。だけど、見返したらきっと全てのシーンが切なくて胸が締め付けられるだろう。

 前回、父・航(橋爪功)が生前書き記した日記を見つけた星太郎(高橋一生)。そこに何が書かれていたのかは分からないが、星太郎は日記を読んで激高した後、部屋に塞ぎ込む。ひとまず落ち着いて真相を確かめようにも、航はしばらく姿を消したまま。もしかして、成仏したのか……?と思いきや、あっさり姿を現した航は日記に書かれていた口に出すのも憚れるような内容は全て自分の“妄想”だと言い張った。

 さらに、ひかり(本田翼)が語っていた、花火のチラシを置いていた喫茶店のママが星太郎の母に似ているという話についても否定する航。星太郎はずっと彼が死に際に残した「すまん」という一言が引っかかっていたのだろう。何か自分に隠し事をしてたんじゃないかという疑いが晴れ、ひと時安心する星太郎だったが、ひかりに「妄想だってことに納得したんですか?」と意味深な問いを投げかけられる。当然、星太郎はひかりの言わんとする意味がわからない。

 思えば、以前にもこういうことがあった。それはひかりが星太郎に「お父さんは本当に幽霊なんでしょうか」という疑問を放った時のこと。同じように合点のいかない星太郎を見つめるひかりの真実を見定めるような瞳が印象に残っている。彼女は明らかに“何か”を感じ取っている、そう思わせた。

 そもそも、ひかりは落ち着き過ぎている。普通、住み込み先の主人が常に幽霊と会話している状況下であんなにも冷静でいられるものだろうか。不気味がって家を飛び出してもおかしくないのに、星太郎を通してあっさり幽霊である航を受け入れたかのように思えたひかり。なぜか。それは彼女自身、幽霊が“視える”体質だから。勘の良い人はもうわかるだろう。幽霊が視えるひかりに航の姿が視えなかったということは、つまり航は幽霊じゃないということだ。

 イマジナリーフレンドという言葉をご存知だろうか。それは一部の人の前にリアリティをもって現れる架空の友達。見えている本人は彼らと会話をしたり、遊んだりすることができるけれど、周りからは認識できない。多くの場合、寂しさを抱える子どもが自分の心を慰めるために生み出す存在とされている。だが、稀に大人の前にも現れることがあり、航は星太郎のイマジナリーフレンドならぬ、イマジナリーオヤジだったのだ。

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