ムロツヨシの怪演続く 『星降る夜に』『どうする家康』で見せた不気味な笑顔
以降、ムロは田母神のように底知れぬ恐ろしさを秘めた役での需要が高まりつつある。大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)では、木下藤吉郎役に抜擢されたムロ。織田信長(岡田准一)に猿と呼ばれる家臣の藤吉郎は、一見お調子者で害がないように思える。ムロのコミカルな演技にも既視感を覚えるが、彼はそこに相手が気づくか気づかないかギリギリの毒を混ぜているのだ。にっこりと笑った目の奥に光がないことに気づいた瞬間、ブワッと鳥肌が立つ。お調子者から一転、大高城をめぐる戦いについて理路整然と持論を展開した、のちに豊臣秀吉となる男の片鱗に触れた松平元康(松本潤)の恐怖を視聴者も体感したであろう。
そして、大石静とは二度目のタッグとなる『星降る夜に』では、本編から5年前に妊娠した妻の命を救えなかった鈴を逆恨みする男・伴宗一郎を演じる。医療裁判を起こしたものの、鈴に落ち度がなかったことから敗訴。しかし、伴はその判決に納得できず、鈴に個人的な嫌がらせをする役柄だ。ついには鈴がいる診察室に入り、「また、人を殺してませんか」と静かに語りかけるその不気味な笑顔に全身が粟立つ。だが、愛する者を失った者としての哀しみも同時に感じられた。伴が鈴にやってきたことは到底許されることではないが、ムロなら彼が抱える罪だけではなく痛みもしっかり背負ってくれることだろう。
ムロツヨシ=喜劇役者という認識は薄まりつつあるかもしれないが、ムロは喜劇と表裏一体の悲劇も見せるという喜劇役者としての役割をより一層全うしていく。
■放送情報
『星降る夜に』
テレビ朝日系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:吉高由里子、北村匠海、ディーン・フジオカ、千葉雄大、猫背椿、長井短、中村里帆、吉柳咲良、駒木根葵汰、若林拓也、宮澤美保、ドロンズ石本、五十嵐由美子、寺澤英弥、光石研、水野美紀
脚本:大石静
監督:深川栄洋、山本大輔
ゼネラルプロデューサー:服部宣之
プロデューサー:貴島彩理、本郷達也
音楽:得田真裕
制作:テレビ朝日、MMJ
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/hoshifuru_yoruni/
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