古川琴音、曲者揃いの中でも光る 『どうする家康』で示す異様な存在感

古川琴音が『どうする家康』で示す異様さ

 そんなプレイヤーとしての鮮やかな手腕を見せる古川が大河ドラマに出演するのはこれが初めて。そもそも彼女は2018年の俳優デビューから、ほんのまだキャリア5年目の才能だ。しかし、数多いる若手俳優陣の中でもすでに中心的な存在であることは広く知られているだろう。2020年には朝ドラ『エール』(NHK総合)で主人公の娘役に抜擢されお茶の間の注目を集める一方で、カルテット・ヒロインの一人を務めた『街の上で』(2021年)をはじめ映画ファンから圧倒的な支持を獲得している。第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞したオムニバス『偶然と想像』内の一編「魔法(よりもっと確か)」で主演を務めたことは、海外でも顔を知られるのとともに、日本国内における“映画俳優”としての地位を確実なものにした。現在も『スクロール』が公開中であり、長編映画初主演を果たしたホラー『みなに幸あれ』の公開が控えているところだ。

 さて、『どうする家康』に話を戻そう。曲者揃いの本作で、初登場時からいきなり大きな存在感を示した“古川琴音=千代”。彼女もまたただ者ではないことは、すでに誰もが理解した。知らぬのは渦中にいる家康らである。古川の演じ手としての強みは柔軟な表情筋や声にあるわけではない。むしろその表面的な部分に囚われている者を軽快に裏切っていくところにこそあると思う。もちろん、その裏切られる対象とは私たちだ。すぐ隣にいたかと思いきや、気がつけば彼女は高い櫓の上からこちらを見下ろしていて、そうかと驚いているうちに、今度は真後ろに立っていたりする。理解した気になるのは危険だろう。古川は間合いを取る/詰める力の突出した俳優なのである。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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