古川琴音、曲者揃いの中でも光る 『どうする家康』で示す異様な存在感

古川琴音が『どうする家康』で示す異様さ

 回を重ねるごとに次から次へと新たなキャラクターが登場する大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)。まるで戦国の世を舞台に見立てる演出がなされた“(俳優)コレクション”の様相を呈している。もはや誰がどのような登場をしても驚きはしないと言いたいところだが、そうもいかないのが本作だ。第7話で初登場した古川琴音もその一人。人々が入り乱れる中、気がつけば彼女の姿にばかり目がいってしまう。個性派揃いの顔ぶれに並んだ彼女もまた、ひときわ目を引く存在なのである。

 第7話「わしの家」で描かれたのは、庶民の間で人気の一向宗の寺々が大変なにぎわいを見せていることを知った主人公・家康(松本潤)が、家臣らとともに農民に変装して本證寺に潜入するエピソード。そこで初めて姿を見せたのが古川の演じる千代だ。本證寺の歩き巫女である彼女は、ここのカリスマ的な住職・空誓上人(市川右團次)の元へと人々を誘う役割を担う謎めいた女性。活気はあるが誰もが貧相な格好をしている中、美しく洗練された身なりの千代は不意に現れては艷やかに舞い、家康一行に自ら近づいては「坊やたち」などと大胆不敵な物言いをする。舞台が舞台なだけに姿そのものが完全に浮いており、どうにもきな臭い。直接的なセリフを口にしていたわけではないが、どうやら家康たちがただ者でないことを見抜いているようであることが一連のシーンから分かった。

 古川がかぎられた出演時間の中で視聴者に与えた印象はさまざまだと思う。千代はミステリアスで浮世離れしていて、たった1話だけではどのような人物なのか分からない。ただ言えるのは、そのフィーチャーのされ具合から重要人物であることは分かる。果たして家康にとって千代は、敵なのか味方なのか……。民衆が陽気に騒いでいるところに挿入された彼女の怪しげな笑みの意味は、おそらく前者である証なのだろう。非常に剣呑なものだった。案の定、その後に民衆を一揆に向かわせるべく扇動。人々の中心で力強い声を上げる古川の姿には、並々ならぬ迫力があった。まるでその声を耳にした者は彼女の意思に従わずにはいられないというほどに。古川は細かな表情の変化と大胆な声の操作によって、千代という人物を私たち視聴者に印象づけてみせたのだ。

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