『探偵ロマンス』時代への叫びのように聞こえた世古口凌の歌唱 “毒”が作品を表すテーマに
お百は自分を偽らざるを得ない悲しい思いを背負った人物だったが、『探偵ロマンス』にはもう一人自分を偽って生きているキャラクターがいる。それは「赤の部屋」の女主人・蓬蘭美摩子(松本若菜)。白井三郎(草刈正雄)からは、「久代」と呼ばれている。亡くなった姉の相馬京子(石橋静河)に瓜二つの村山隆子(石橋静河)と出会い、彼女もまた自分自身と対峙することになる。姉のようにはなれないと悲観的な美摩子に隆子がかける言葉が「お姉さんはお姉さん。私は私。美摩子さんは美摩子さんです。誰も誰かの代わりにはなれへんよって」というセリフ。この第3話、もしくは『探偵ロマンス』で描かれているのは“ジェンダー”という視点だけではない、様々な立場でもがき、揺らめいている人たちの心の叫びを代弁しているように思えてならない。
怪盗としての本性が暴かれた住良木平吉(尾上菊之助)。最終回となる第4話の予告では第1話を彷彿とさせる激しい銃撃アクションがすでに展開されている。「男装の麗人」としての出演が発表となっている市川実日子は必然的に次回登場することになるのだろうが、驚くのが公式サイトに記載されている第4話のエピソード内容である。「え!? そうなるの……?」という衝撃展開に触れるかはお任せするが、第1話から一貫して三郎が使ってきた「毒」という言葉が『探偵ロマンス』を表すキーワードとなっている予感がする。
■放送情報
土曜ドラマ『探偵ロマンス』
NHK総合にて、毎週土曜22:00~22:49放送 【全4話】
出演:濱田岳、石橋静河、泉澤祐希、森本慎太郎、世古口凌、本上まなみ、浅香航大、松本若菜、近藤芳正、大友康平、岸部一徳、尾上菊之助、草刈正雄ほか
脚本:坪田文
音楽・主題歌:大橋トリオ
制作統括:櫻井賢
プロデューサー:葛西勇也
演出:安達もじり、大嶋慧介
撮影場所:京都東映撮影所、関西近郊ロケほか
写真提供=NHK